AI、RPA、Slackなどに注力
DeNAのIT戦略:事業のエンジンとしてAIを強化、自動運転や医療分野で実績も
AIへの取り組みを強化しているDeNAは、破壊の時代をどう生き残っていくのか。AIとインターネットを中核に、多様な事業を構築する「事業化能力」を強みとし、あらゆる事業領域でパートナーとの共創を加速させていく。
ビジネス領域におけるAIへの取り組み
Eコマースやゲームで急成長を遂げてきたディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は、今やインターネットサービスだけにとどまらず、スポーツ、オートモーティブ、ヘルスケアなど幅広い領域で事業を拡大している。特に2017年から新たな事業のエンジンとして注力しているのが人工知能(AI)だ。ガートナー ジャパンが2018年4月25日~27日に開催したサミットにおいて、DeNAが具体的な取り組みを紹介した。
DeNAのIT戦略部で部長を務める成田敏博氏がビジネス領域の取り組みとして紹介したのが、AIや自動運転などの技術を活用したオートモーティブ事業だ。神奈川県タクシー協会と協業中のタクシー配車アプリ「タクベル」、日産自動車と実証実験を行った次世代交通サービス「Easy Ride」、自動運転バス「ロボットシャトル」、またJR東日本レンタリースとはスマートキーによる無人レンタカーなども展開しており、事例は枚挙にいとまがない。
ヘルスケア領域では、東京大学医科学研究所との共同研究成果を社会実装すべく、2014年に開始した遺伝子情報検査サービス「MYCODE」がある。医薬領域では、旭化成ファーマおよび塩野義製薬と協業し、AIを用いた創薬手法の共同研究を開始すると発表した。医薬品を構成する化合物を組み合わせ、効果があるかどうかを検証するプロセスに機械学習を活用するもので、検証にかかる期間とコストを半減させる技術の確立を目指すという。
その他にもスポーツにおけるテクノロジー活用、機械学習を活用したゲームパラメーターの高速チューニング、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)コミュニティーでの自然言語解析チャット「しぃな」、ライブコマース動画の自動解析、人物動画による属性・姿勢・行動解析など、DeNAのAI活用は多方面に広がっている。
これらの活動の技術的な支柱となっているのが2016年に設立したAIシステム部で、先端AI技術の研究および開発、AIを活用したサービス提供、データ分析基盤の提供などに当たっている。ビジネス視点からAI活用を主導するのがAI戦略推進室で、AI活用施策の立案、AI新規事業計画の策定、パートナーとのAI活用事業創出などを担う。「この2つの組織が両輪となり、全社横断のAI活用をドライブさせています」と成田氏は強調した。
コーポレート領域ではRPAとSlack活用に注力
DeNAは、コーポレート(社内業務)領域においても積極的なAI活用を展開している。成田氏は「インターネット×AIカンパニーとして、全社業務においてAIの適用余地を模索したい」と狙いを示した。
こちらも多様な取り組みがあるが、2017年に開始した施策の中でも特に注力したものの1つが、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)製品を活用した業務効率化である。社内システムとの相性、強力な監査機能、エンジニアとの適合性などを総合的に評価して「Blue Prism」を導入。「1年をかけて10種類以上の業務を自動化しました」と成田氏は語った。
RPAと並ぶ施策として2017年10月から注力してきたのが、チャットツール「Slack」の大企業版である「Slack Enterprise Grid」の全社展開だ。Slackと聞いてまず思い浮かぶのはビジネスチャットとしての活用だが、成田氏は「チャットにとどまらないビジネスコラボレーションハブとして、多様な社内システムとの連携を図るととともに、組織全体の生産性向上や企業のカルチャーそのものを変革することを目指しています」と強調した。
そうした中で推進してきたのが、以下に示すSlackの活用施策だ。
- AI自動応答チャット
- 社内ユーザーの問い合わせに対応
- ワークフロー承認機能の一元化
- 財務会計・経費精算システムや汎用(はんよう)ワークフローと連携し、Slack Enterprise Gridのみで承認作業を実現
- RPAの実行命令チャネル(送信経路)
- ロボットによって自動化された業務の実行命令を送信
- トイレの空き状況通知bot
- オフィス内のトイレの空き状況をIoT(モノのインターネット)の仕組みで吸い上げ、リアルタイムでの空き状況を通知
興味深いのは、こうした社内ITに関する取り組みを社外にもオープンにしていることだ。2018年3月、DeNAの他にクックパッド、DMM.comラボ、グリー、LINE、ヤフー、メルカリ、ミクシィグループ、楽天、リクルートテクノロジーズといったネット企業10社のシステム責任者が集まり、各社の取り組みを互いに披露し合う「社内IT施策共有会」を開催したという。「事業上はライバル関係にあるとしても、コーポレート領域については互助的にノウハウを共有したい。それが少しでも業界全体の生産性向上につながれば大きな意義がある」と成田氏は語った。
今後ビジネスはピープルセントリック(顧客中心)を機軸とし、テクノロジーによるサービスをより早く、より安く、より満足度の高い形で提供することが当たり前のように求められるようになる。これができなかった企業は社会から不要と見なされ、10年以内に破壊者(ディスラプター)に淘汰(とうた)されていく可能性がある。
こうした破壊の時代にどう臨むべきなのか。成田氏は「技術が加速度的に進化する中で、どんな企業も単独では生き残ることは困難」と危機感を示した。あらゆる事業領域において、企業や業界の垣根を越えた「共創」が強く求められる時代が到来しているのである。
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