ビジネスメッセージング市場に「独り勝ち」はない
徹底比較:Apple Business Chat vs. WhatsApp Business API、パートナー戦略の違いは?
WhatsAppはビジネスメッセージングAPIに関して、Appleとは違うアプローチを採っている。WhatsAppがベンダーとのパートナーシップを通じてどう差別化を図っているのかを解説する。
Facebook傘下のWhatsAppは2018年8月に「WhatsApp Business API」を立ち上げた。これは「Apple Business Chat」に似ているが、この2つのビジネスメッセージングサービスは、パートナー戦略に違いがある。WhatsAppがAPIベンダーに照準を絞っているのに対し、Appleはコンタクトセンターベンダーに重点を置く。
WhatsApp Business APIプラットフォームでは、組織がWhatsAppを介してプログラマブルな形で顧客とつながることができ、注文状況に関する情報の自動化や、サポートサービスへのアクセス、Webサイトでクリックするとチャットできるボタンなどの機能を提供する。
WhatsAppのブログによると、同社は顧客とのコミュニケーション管理を専門とする特定数の企業と直接的に連携している。開発用のAPIを幅広い組織向けに提供することは検討していない。それよりも、規模の大きな企業に照準を定め、パートナー関係を通じてその溝を埋めている。
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似ているようで、明らかに違うこと
表面上は、WhatsAppのビジネスメッセージングに対するアプローチはApple Business Chatに似通っている。だが立ち上げ時に選んだ顧客とパートナーの顔ぶれを見ると、明らかな違いがある。
Appleのビジネスメッセージングパートナーに対するアプローチは単純だ。Appleはコンタクトセンターベンダーと提携し、そうしたベンダーがコントロールされた形でBusiness Chat APIを利用できるようにしている。これによってAppleは、統一性やユーザーエクスペリエンスの審査ができる。パートナー企業はAppleの承認を得た上で、Apple Business Chatの機能をコンタクトセンター顧客に提供する。
一方、WhatsAppはパートナーに対して異なるアプローチを採り、サービスとしてのコミュニケーションプラットフォーム(CPaaS)ベンダーと、コンタクトセンターベンダー、途上国の組織、という3種類のベンダーに的を絞る。
メッセージングAPIをCPaaSベンダーに提供
WhatsAppの場合、CPaaSベンダーはビジネスメッセージングAPIを利用して、自分たちの限界を見極めることができる。WhatsAppのビジネスメッセージングを使いたいベンダーは、パートナーのうちの1社を選び、そのパートナーのAPIを通じて、自分たちに合うと判断したどんな機能でも構築できる。
WhatsAppのアプローチでは、Apple Business Chatに比べて幅広い用途向けに、ビジネスメッセージングプラットフォームとAPIを公開する。Appleがエクスペリエンス全体をコントロールしようとしているのに対し、WhatsAppは少数のパートナーと連携して一部の用途やエクスペリエンスを見出してもらうことにより、コントロールを維持する。
WhatsAppのパートナーのうち、SmoochやGupshup、ClickatellなどはCPaaSベンダーではなく、APIを通じてアプリやWebサイトやコンタクトセンタープラットフォームにコミュニケーションを組み込むサービスを展開している。そうしたベンダーはいずれも、初期のApple Business Chatにアクセスすることはできなかった。Appleは、パートナーにプラットフォームを公開して、自分たちが考えていなかった用途を開拓してもらうことは考えていないらしい。
メッセージング中心のコンタクトセンターとの提携
WhatsAppが、カスタマーサービスプラットフォームのZendeskとソーシャルメディア管理サービスのSparkcentralをコンタクトセンターパートナーとして選んだことは興味深い。この2社は従来型のコンタクトセンタープロバイダーではなく、そのサービスは音声を中心としていない。これに対してAppleのコンタクトセンターパートナーのCisco SystemsやGenesys、Nuance Communicationsなどは、依然として音声を中心としている。
Zendeskはコンタクトセンターベンダーの中では唯一、Apple Business ChatとWhatsApp Business APIの両方の公式パートナーとなっている。
途上国のビジネスメッセージング
Appleも途上国に進出しているが、WhatsAppは途上国のユーザーが多い。従って、南アフリカのヨハネスブルクに本拠地のあるPraekelt Foundationが、アフリカ大陸に合わせた用途に照準を絞る目的で、WhatsApp Business APIのローンチパートナーの1社となったことは理にかなう。WhatsAppの他のパートナーは全て営利企業だが、非営利組織のPraekelt Foundationはモバイル技術を使って貧困世帯を支援している。
途上国に重点を置くことで、WhatsAppにとっては新たなチャンスが開ける。WhatsAppがそうした諸国のニーズについて理解を深め、異なる用途とデリバリモデルの実験をする上でパートナー各社は助けになり、そうした各社が主要メッセージングベンダーとしての地位を固める上でも役に立つ。
ビジネスメッセージングの独り勝ちはなし
Apple Business ChatかWhatsApp Business APIかという決定は、パートナー企業にとっても法人顧客にとっても、二者択一ではない。「Twilio」や「Nexmo」「MessageBird」のようなCPaaSがオムニチャネルメッセージング機能を提供する中で、両方をサポートする必要が生じる。デベロッパーはワークフローを定義して実装し、さまざまなソーシャルメッセージングプラットフォームで使用できる。
Apple Business Chatを使う顧客もあれば、WhatsAppや「Facebook Messenger」、その他のビジネスメッセージングサービスを選ぶ顧客もある。顧客が1つの特定のチャネルのみを使うことを組織が前提とすることはできず、すべきでもない。ソーシャルメッセージングの分野は、少なくとも当面の間は、1社のみが独占的にユーザーにアクセスするような、勝者が独り勝ちできる状況にはならない。
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