ソフトウェアとハードウェアの暗号化の違い
「BitLocker」で影響が拡大 SSD暗号化の脆弱性とは
研究者が大手メーカー製SSDの暗号化の実装における脆弱(ぜいじゃく)性を発見した。この脆弱性を突いて簡単に暗号化データを復号できる。さらにMicrosoftの「BitLocker」機能がこの問題に拍車を掛けた。
ラドバウド大学の研究者であるカーロ・メイジャー氏とバーナード・バン・ガステル氏は、半導体ベンダーCrucialとSamsung Electronicsがそれぞれ製造した一部のSSDのファームウェアについてリバースエンジニアリングで、暗号化を無効にできることを発見した。パスワードと暗号化の秘密鍵が関連付けられていないことが原因だ。
メイジャー氏とバン・ガステル氏は、発見結果をまとめた論文で「この分析により、複数のベンダーに影響する重大な問題が明らかになった。さまざまなモデルで、暗号化を完全に回避できるので、パスワードや鍵を全く知らなくても、データを完全に回復できる」と述べている。
暗号化に対する誤解
「TCG OPAL」による暗号化を利用している場合は「BitLocker」によって状況がさらに悪化する。
この場合、BitLockerはソフトウェアベースの暗号化機能を無効にし、ハードウェアベースの暗号化実装に完全に依存する。これが初期設定時の動作であるため、多くのBitLockerユーザーが意図せずにハードウェアベースの暗号化を使用して、同じ脅威にさらされるという。
セキュリティ企業のTripwireの脆弱(ぜいじゃく)性およびエクスポージャ研究チームのコンピュータセキュリティ研究者であるクレイグ・ヤング氏は「ベンダーのSSD暗号化機能が、有意義なセキュリティを実現すると期待するのは間違いだ」と指摘し、ユーザーは暗号化のセキュリティメリットを誤解しがちだと付け加える。
「ディスクの暗号化は、幾つかの限られた手段や経路を防止するだけで、大半の侵害に対しては抑止効果はほとんどない。主にデバイスが紛失したり、盗まれたり、一時的に攻撃者の手にあるといったシナリオで効果を発揮する」と、ヤング氏は述べている。
想定している攻撃は、攻撃者が「物理的な弱点」を悪用してデータや暗号解除鍵にアクセスすることだ。そのため、このセキュリティ対策の恩恵を受けられるのは、システムの電源を完全に切っている場合に限られる。稼働中のシステムがマルウェアに感染したら、ディスクの暗号化では保護できない。
BitLockerはどうあるべきか
ジョンズホプキンス大学の情報セキュリティ研究所の教授で、暗号技術の専門家であるマシュー・グリーン氏は、Twitterで「BitLockerがSSDの暗号化機能を信頼すること」を挙げて、Microsoftを厳しく批判した。
ネットワークセキュリティ製品を販売するJuniper NetworksのJuniper脅威ラボの責任者を務めるムニア・ハハド氏は、BitLockerの全てのバージョンがSSDの暗号化に依存するわけではないと指摘する。
「例えば『Windows 7』では、暗号化はBitLocker自身が実施する。『Windows 10』では、BitLockerは暗号化をSSDに委任できるようになっている。だが、確かにハードウェアベースの暗号化を無効にして、ハードドライブをソフトウェアで暗号化する方法はある」とハハド氏は語る。
「1社のOSベンダーと多数のハードウェアメーカーが常に最新情報を共有するのは、非常に難しい。脆弱なデバイスを認識したら、ハードウェア暗号化の代わりにソフトウェア暗号化を有効にできれば、望ましいと思う」(ハハド氏)
Microsoftはセキュリティアドバイザリを公開し、BitLockerがSSDの暗号化に依存しているか、あるいはソフトウェア暗号化が有効になっているかをユーザーがチェックする方法を解説している。
ヤング氏は、BitLockerのソフトウェア暗号化は、デフォルトで有効化されれば、今回のような問題は軽減されるが、それでも、オプトインで有効にする方式が重要だと見ている。
「全てのWindowsシステムをデフォルトで暗号化すると、技術に詳しくないユーザーが、ディスクの破損によるデータ損失に直面するといった重大な影響を受ける恐れがある。また、一部のシステムは、ディスク全体が暗号化されると、パフォーマンスが著しく低下するかもしれない」と、ヤング氏は説明する。
「より望ましいソリューションは、Microsoftが動作保証プロセスを確立し、ベンダーがそれに従って製品を提出して、セキュリティ保証を受けられるようになることだ。デバイスに関してWindowsとの互換性が保証される仕組みがモデルになる。詳細にレビューされ、BitLockerと同様のセキュリティ機能が確認された製品だけが、BitLockerの代わりに信頼されるようにすべきだ」(ヤング氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
6
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
7
データセンター事業者が「脱VMware」をした“例のライセンス問題”じゃない理由
-
8
積水化学工業が「SAP S/4HANA Cloud」の“全グループ導入”に踏み切った訳
-
9
IBM iのブラックボックス化を打破 資産継承と進化を実現する「IBM Bob」の実力
-
10
「有線LAN環境」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
9
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー