クラウド勤怠管理システムの選び方
「2019年こそ勤怠管理システム導入の好機」といえる3つの理由
「働き方改革関連法」が成立し、働き方を見直す機運が高まっているものの、勤怠管理システムの導入は後回しにされがちだ。その理由と、2019年が「勤怠管理システム導入の好機」だと判断できる理由を解説する。
本稿では、主に勤怠管理システムの選定およびプロジェクト推進を担う方に向け、勤怠管理業務のシステム化プロジェクトが進みにくい要因をお伝えするとともに、なぜ今が勤怠管理システム導入の好機なのかについて紹介する。
勤怠管理業務のシステム化が進みにくい要因
勤怠管理業務のシステム化プロジェクトが進みにくい要因は、次の3つだ。
- 売り上げを生まないシステムであること
- 人件費の増大リスク
- 「なんとかなっているから、まだいいじゃないか」と思われていること
勤怠管理システムは売り上げを生まない
勤怠管理業務のシステム化プロジェクトは、それ自体が売り上げの増加に貢献するわけではない。勤怠管理は明らかに人手がかかっており、クリエイティブとは呼びにくい業務ではあるが、これにまつわる課題を解消することで会社の売り上げが増えたり、利益が増加したりするかというと、必ずしもそうではない。毎月の限られた時期にだけ集中的に発生する勤怠の集計業務がなくなったからといって、人事部の人数が減らせるわけでもない。こうした背景が、集計業務を担当する人事関係者がさまざまな問題や疑問、ストレスを抱えていても、システム導入プロジェクトを進められない大きな理由になっていると考えられる。
増大する人件費
勤怠管理システムを導入していない企業の中には、時間管理をしていないところもある。その場合、勤務時間は手書きやスプレッドシートへの入力による自己申告などを基に集計されている。
こうした企業が勤怠管理システムを導入する場合、引き続き勤務時間は自己申告を基にするケースも少なくないが、一般的にはコンプライアンスの観点から、タイムレコーダーの打刻などによる客観的な勤務開始・終了記録を採用することとなる。ここで問題になるのが、打刻によって自動集計した勤務時間数と、本人申請で集計されていたこれまでの勤務時間数の乖離(かいり)である。
毎日22時まで残業していたのに、定時の18時までだったと申告していたような極端なサービス残業で集計されていなかった業務時間だけでなく、ラッシュ時の混雑を避けるために自己都合で早めに会社に着いてくつろいでいる時間、就業後更衣室で雑談をしていた時間など、自己申告では集計されていなかったさまざまな時間が集計対象となる可能性がある。実際には、客観的に収集された「打刻時刻」と、本人と会社が勤務時間として合意した「就業時刻」を、システムの上では分けて考えるような、勤務ではない時間を給与対象としない仕組みを多くの勤怠管理システムが備えている。それでも自己申告とは違う結果が出る可能性がある。
このような状況から「タイムカードを押すようになったら人件費が増加してしまうのではないか」といった管理者の懸念も、勤怠管理業務のシステム化を阻害している要因の一つと考えられる。
「なんとかなっているから、まだいいじゃないか」
実際に毎月の勤怠集計業務が大変で、人力の対応に限界を感じていたり、ストレスを感じていたりする人事担当者は多い。
読者の皆さんの会社が決めている「勤怠の締め日」は毎月何日だろうか。勤怠の締め日は会社ごとに異なり、「10日締め」「15日締め」「20日締め」「25日締め」「月末締め」など、さまざまな締め日のルールが存在する。
例えば月末締めの会社の場合、勤怠集計業務を実施するのは翌月頭になるわけだが、月初に休日が集中する1月や5月は、担当者が休日出勤して対処しているケースもある。秋は月の中盤以降に祝日が集中しており、15日締めや20日締めの会社は、給与支払いまでの通常営業日が少なくなりがちだ(少し話はそれるが、情報システム部の皆さんが人事部の方へ問い合わせをするタイミングとしては、この勤怠締め日近辺を避けることをお薦めする)。また他にも、シフト勤務の多い職場の場合、勤務報告の内容に不備があっても現場スタッフと人事担当者の勤務時間が合わないために、人事から本人への確認に時間がかかることもある。
勤怠の集計業務はこのように、各社の事情によるさまざまな困難が存在するが、それでもほぼ破綻することはない。給与支払いという「絶対に止められない戦い」は、業務量の増加などによる危機的状況にあったとしても、人事担当者の努力でなんとか毎月完遂されている。結果として経営層などの管理者から「なんとかなっているから、まだいいじゃないか」と思われてしまう要因になっている。
「今こそ勤怠管理システム導入の好機」といえる3つの理由
前述の3つの要因があるために、勤怠管理業務のシステム化は一般的に進めにくいプロジェクトといえる。だが世の中の大きな変化の中で、まさに今がクラウド勤怠管理システムを導入する好機だと筆者は考えている。その理由は3つ、「採用難」「法令順守」「働き方改革」だ。近年起きている社会の変化とともに、なぜ「今こそ勤怠管理業務のシステム化を進める好機なのか」を解説する。
採用難
「採用難」についてはもはや疑う余地はないだろう。厚生労働省が発表した2018年第3四半期の有効求人倍率は1.63倍(図1)。これは1974年以来、実に44年ぶりの高水準な有効求人倍率である。この高い有効求人倍率の裏側で起こっている問題が採用難だ。
現場は慢性的な人手不足に悩まされ、人事担当者は常に採用活動をし続けなければならない状況にある。アルバイト不足で閉店をせざるを得ない飲食店なども出てくる現在、採用の成否が企業の存続に関わる状況にまで来ている。
「採用が困難になる中で、採用、教育、定着こそが人事にやってほしい仕事だ。勤怠集計のような機械でもできる仕事は、できるだけ機械に任せたい」――これは実際に筆者が、勤怠管理システム導入を検討している企業トップから聞いた言葉である。人事に求められる仕事の変化が、勤怠管理業務のシステム化の原動力となっている。
法令順守
近年は特に「法令順守」が強く求められている。厚生労働省は2017年5月から毎月、労働基準関係法違反の疑いで送検された企業を公表している。毎月公開されるこうした企業のリストは、一部で「ブラック企業リスト」と呼ばれ、さまざまなメディアで取り上げられるようになった。万一このリストに自社が掲載された場合、採用に大きな悪影響を与えるだけでなく、顧客に対しても大きなマイナスイメージを与えることは間違いない。
同様に、2018年8月に厚生労働省が発表した「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成29年度)」は衝撃的な内容だ。公表された「100万円以上の割増賃金の遡及支払状況(過去10年分)」によれば、同省が2017年4月から2018年3月の間に是正指導した企業数は1870社で対前年比約138.6%、対象労働者数は20万5200人で対前年比約209.4%という大きな伸びを見せている。是正支払額に至っては446億4195万円で対前年比約350.9%というとんでもない増え方だ。2016年から2017年の間に何が起こったかは専門家の解説に任せたいが、消費者金融に対する過払い金の返還請求が終息を迎えようとしている今、これをビジネスとしてきた弁護士事務所や司法書士などが、次は未払い残業をターゲットにしているという話も耳にする。その真偽はともかく、未払い残業代に関する企業のリスクは明らかに増大しているといえるだろう。
参考
監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成29年度)および別紙2「100万円以上の割増賃金の遡及支払状況(過去10年分)」(厚生労働省)
企業の労務関連リスクが高まっており「しゃくし定規に法律通りにしたら会社が潰れてしまう」とは言っていられない世の中になっているのだ。このような社会背景も、勤怠管理業務のシステム化を後押しする要素である。
働き方改革
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」いわゆる「働き方改革関連法」が2018年6月29日に成立した。この法律に限らず「働き方改革」を実現しようという動きは日本全体に広がっている。さまざまな業界団体を筆頭に各社が働き方改革に関する取り組みを続け、新聞などで「働き方改革」という言葉を見ない日はないほどだ。こうした状況によって、従来は勤怠管理や労務管理にそれほど強い関心を持たなかった経営層も、自社の状況や改善に関心を寄せるようになってきた。売り上げを生むわけではないし、下手に手を出せば人件費の増加を招く恐れもあって放置されがちだった勤怠管理業務の課題が、経営層の注目を集めるようになってきたのだ。「社長が『働き方改革』と口にするようになった今がチャンスなんです」――これは実際に勤怠管理システムを検討中の担当部長から聞いた言葉だ。
勤怠管理業務を効率化したい、法令に基づいた労務管理をしたい、仲間がイキイキ働ける会社にしたい――人事担当者であれば、誰もがそう考えるに違いない。そんな人事担当者にとって、今はまさにビッグチャンスだ。
「働き方改革」は聞こえがいいスローガンだが、単なるいい話だけでは企業は動かない。「採用難」で、「法令順守」が求められるようになった社会的な変化は、企業が「働き方改革」に真剣に取り組む合理的な理由になるはずだ。
駒井拓央(こまい・たくお)
ネオレックス取締役社長。ASP・SaaS・IoTクラウド コンソーシアム(ASPIC)理事。MIJS(Made In Japan Software & Service)コンソーシアム 人材育成委員会副委員長。ネオレックスはクラウド勤怠管理システム「バイバイ タイムカード」を提供する名古屋のITベンチャー企業であり、2017年に「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の審査委員会特別賞を受賞した。
このコラムについて
パート、アルバイト、正社員など、社内で働く全てのメンバーが利用する勤怠管理システムは、一度導入したら他のシステムに変更するのはなかなか大変だ。だからこそ、できるだけ多くの方が、自社にぴったりの勤怠管理システムに出会えるよう、サービス選びのポイントを紹介する。
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クラウド勤怠管理システムの選び方
パート、アルバイト、正社員など、社内で働く全てのメンバーが利用する勤怠管理システムは、一度導入したら他のシステムに変更するのはなかなか大変だ。だからこそ、できるだけ多くの方が、自社にぴったりの勤怠管理システムに出会えるよう、この連載を進めていきたい。
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