検索
特集/連載

青山学院大学が「出願から入学手続きまで丸ごとIT化」した理由Web出願システムから「UCARO」へ(1/2 ページ)

青山学院大学は大学入試業務の効率化を進めるべく、出願から入学手続きまでの一連のプロセスをIT化した。その理由とは何か。具体的なメリットは。同校入試課の鈴木博貴氏に聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

関連キーワード

EdTech | 教育 | 教育IT


写真
青山学院大学の正門から続く銀杏並木の先にある、国登録有形文化財の間島記念館《クリックで拡大》

 表参道駅から徒歩約5分、都心の一等地にキャンパスを構える青山学院大学(東京都渋谷区)。キリスト教の教義をベースにした人格教育、幼稚園から大学院までの一貫教育といった教育面での特色に、その都会的なイメージも相まって、同校は関東圏の大学受験生の間で常に高い人気を誇る。近年では箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)における陸上部の活躍で、全国的にもその名が広く知られる。

 青山学院大学は2017年度から、入学試験にITを活用する取り組みを進めている。その一環として導入したのが、受験生や入試担当者の負担を軽減するシステムだ。受験生にスマートフォン向けアプリケーションやWebのポータルサイトを提供し、出願、受験、合否通知、入学手続きといった一連の手続きや情報確認を手軽にできるようにした。対象は一般入試と大学入試センター試験利用入試に出願した全員。2018年度入学試験でこのシステムを利用した受験者数は、実に約3万4000人に上る。

入試業務に「UCARO」を全面採用

 システムには入試業務のアウトソーシングビジネスを手掛けるODKソリューションズ(以下、ODK)が開発した、大学入試支援Webサービス「UCARO(ウカロ)」を採用した。青山学院大学入試課の鈴木博貴課長は、UCARO導入の背景には、入試業務の効率化に対する切実なニーズがあったと説明する。

写真
青山学院大学の鈴木博貴氏

 入試に関わる業務は多岐にわたり、多くの人手が掛かる。青山学院大学はこれまで、入試業務は「(全校から人をかき集める)人海戦術に頼ってきました」と鈴木氏は明かす。1月から4月に掛けての受験シーズンや入学シーズンは、経理部門にとっては決算時期と重なる。学生生活課にとっては学生の受け入れ準備で、年間を通じて最も忙しい時期だ。こうしたタイミングで、各担当者は本来の業務とは異なる業務に人手を取られることになる。こうした一連の業務を「何とか効率化できないかと検討を進めてきました」と同氏は語る。

 「業務効率化のためにはIT活用が不可欠」という考えの下、その取っ掛かりとして導入を進めたのが、Web出願システムだった。幾つかのWeb出願システムを比較検討し、最終的にODKのシステムを選定した。青山学院大学は以前から、入試業務の一部である出願業務を同社にアウトソーシングしていた。「Webを通じた出願受付から、その後に続くバックエンド業務まで、一連の業務を一括してお任せできる点を評価しました」と、鈴木氏は説明する。

Web出願を超えた業務効率化に向けて「UCARO」に注目

 こうして青山学院大学は2015年、Web出願システムを導入した。ODKがUCAROの提供を開始したのは、翌年の2016年のことだ。同校は、アウトソーシングやWeb出願システムで同社のシステムを利用していたこともあり、さらなる業務効率化を目指してUCAROの採用を検討した。

 UCAROは入試担当者と受験生双方の負担軽減に役立つ機能を備える。出願の受付にとどまらず、受験者を募るための情報提供、出願から受験に至るまでのフォロー、合否発表、合格から入学までの間の各種手続きまでをIT化して効率化。受験生はUCAROのスマートフォン向けアプリケーションや受験生向けポータルサイトを利用すれば、入試に関する情報確認や各種手続きを一通り済ませられる。

 ユニークなのが、受験者が一度UCAROに入力した自身の出願データを、UCAROを利用するどの大学に対しても適用できるようにしていることだ。各大学に対して個別にシステムを構築するのではなく、複数の大学が共用するクラウドサービスであることを生かした機能だといえる。UCAROを採用している大学は、2018年7月時点で全国44大学。約780校ある大学の1割に満たないが、導入校が増えるほど受験生にとっての利便性は高まることになる。

メッセージ機能で「きめ細かなコミュニケーション」を実現

 青山学院大学がUCAROを採用した背景には、文部科学省が中心となって進めている「高大接続改革」への対処もある。変化の激しい時代において、学生が自ら新たな価値を創造していける力を育む――。こうした目的の下で、高等学校教育と大学入試、大学教育を三位一体で改革するのが、高大接続改革の基本的なコンセプトだ。

 高大接続改革に関わる大学教育改革の大方針として、文部科学省が掲げているポリシーがある。「ディプロマ・ポリシー(学位授与方針)」「カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施方針)」「アドミッション・ポリシー(入学者受入方針)」の3つのポリシーだ。2017年4月1日施行の「学校教育法施行規則の一部を改正する省令」で、各大学にこの3ポリシーの策定と公表を義務付けた。

 鈴木氏は、特にアドミッション・ポリシーを運用していく上で、UCAROの機能が役立つと考えたという。特に注目したのが、大学側から受験生側へのメッセージ機能だ。

 アドミッション・ポリシーの下では、各学部でどのような学びが得られるかを明確に示し、それにふさわしい受験生を選ばなくてはならない。これまでは受験生に対して何か情報を発信する際、従来は受験生に大学の公式Webサイトを閲覧してもらうしか方法がなかった。

 UCAROを利用すれば、大学を「お気に入り」として登録してくれた受験生に対して、スマートフォンアプリを通じて大学側からさまざまなメッセージを送信できる(画面1)。青山学院大学はこうした機能を活用すれば、受験生に大学の教育方針やカリキュラムなどを紹介しやすくなると判断した。

画面
画面1 青山学院大学はUCAROのメッセージ機能を使い、大学のイベントをはじめとする多様な情報を配信している(画像提供:ODKソリューションズ)《クリックで拡大》

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る