“脱Excel”か“活Excel”か
Excelの長過ぎる関数式をシンプルにするために、職場で心掛けたいポイント
気が付けば「Microsoft Excel」の関数式が長文に……。作成者なら理解できる関数式も、第三者が読み解くのは一苦労だ。チームで使うExcelツールならば、シンプルな関数式にしておかないと大きなデメリットが。
Excelの関数はなぜ複雑になるのか
学校や資格試験で出題されるテストでは、テストの答案用紙に解答欄が必ず設けられています。当たり前ですが、解答欄以外に答えを書いても正解にはなりません。論述式の問題であれば、解答に必要な文字数が定められていることが一般的で、この場合は定められた文字数を満たすことも解答の要件として求められます。つまり求められる問いに対して、その答えを指定された箇所に指定された手順で記載しなければなりません。
企業が業務で使用する帳票やシステムについても、基本的に同様のルールがあります。テストのように「知識の定着度合いを確認する」という意味はありませんが、企業の業務でも指定された欄に指定された内容を正しく記載してもらうことが重要になります。従ってシステム設計者は、帳票であれば視覚的な分かりやすさを追求し、システムであれば入力の漏れや、指定された文字数が入力されているかどうかをチェックする機能を実装し、入力ミスを減らす工夫をすることになります。
このように、私たちは学生の頃から「答えを記入すべき場所に、指定された方法で記入することが、正しいこと」だと認識しているといっても差し支えないでしょう。表計算ソフトウェア「Microsoft Excel」(以下、Excel)の関数式が長くなる原因も、このような認識によるところが大きいかもしれません。「テストの問題に対する答え」を「関数式を使用して算出された結果」になぞらえて考えると、解答すべきセルの中に必要な関数を全て入力してしまうことに、特段、疑問を持たなくても不思議ではありません。しかもExcelの数式バーは、通常は1行分の表示領域しかありませんが、必要に応じて縦方向に表示領域を拡張できます。つまり解答欄を拡張できるわけです。事実上、解答欄の文字数に制限がないも同然です。関数式が長く複雑になることを、Excelは機能上許容しているとも言えます。
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Excelの関数式が長く複雑化することのデメリット
だからといってExcelの関数式をいたずらに長く複雑にしても、良いことはありません。むしろデメリットが大きくなるのが事実です。
関数式が長く複雑になるとミスに気付きにくい
デメリットの1つ目は、関数式が長く複雑になるとミスに気付きにくくなることです。Excelの関数式が長くなる原因の多くは、条件分岐によって算出結果が変わる関数を記入するとき、いわゆる「IF関数」を使用するときです。IF関数を使用するときの構成要素には、
- 条件の数
- 条件の複雑さ
- 条件の結果
があります。
条件の数については「IFS関数」を使うことでデメリットを回避できます。IFS関数であれば、条件の数が2つ以上あっても、複数の条件をIFS関数内に記載できるため、関数がそれほど長くなることはありません。ただしIFS関数を利用するには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- サブスクリプション型の「Office 365」を契約し、かつ「Excel 2016」以降のバージョンを利用
- 買い切り型の最新版「Office 2019」を購入
一方で上記に当てはまらないExcelのバージョンを利用している企業は、IFS関数を使用できないため、IF関数を使用することになります。IF関数は条件を1つしか設定できないため、条件の数が2つ以上ある場合はIF関数を入れ子にしなければなりません。そのため条件の数が増えれば増えるほど、関数が長くなってしまいます。
条件の複雑さについては、処理内容によって条件の要素が1つにならない場合に注意が必要です。この場合「AND関数」や「OR関数」を用いて複数の条件を記載するか、条件の要素に対して1つずつIF関数で条件を分岐させる必要があります。前者は関数式の複雑さにつながりますし、後者は関数式の長さに影響を及ぼします。
条件の結果については、単なる値を関数式に記入するのではなく、セルの値を計算する計算式を記入する場合があります。同じシート内にあるセルの値を単純に合計したり、平均を計算したりする程度であれば問題ありませんが、他のシートにあるセルの値を使用したり、複数のセルの値を使用した計算をしたりすると、関数式を長くしてしまう要因となります。
これらの要素が入れば入るほど、関数式の構成要素は増えていくため、関数式の可読性が悪化します。関数に何らかの間違いがあればExcelはエラーとして表示してくれますが、式自体は合っていても条件の設定を間違えたり、計算式の数値やセルの指定を間違えたりするミスは、自分で確認するしかありません。可読性の悪化は、こうした確認作業に時間がかかる原因となります。
長く複雑になった関数式は、作成者以外に理解されにくい
デメリットの2つ目は、長く複雑になった関数式は、他者が理解することが困難になることです。
作成者は、作成の過程を全て自分でこなしているので、結果として関数式が長くなることになっても関数式の内容を理解しています。そのため関数式を修正することになっても、それほど苦にはならないでしょう。
他者はそうした過程を経ることがないため、関数式の内容を一から確認していくことになります。さらにいえば、他者が作成者と同様の関数の知識を持っているとは限りません。作成者よりも知識量が少なければ、確認作業の時間はそれだけ長くなります。そして往々にして、さまざまな状況の変化に応じて関数式の修正が必要になり、その修正作業は作成者以外がすることも珍しくはないのです。
Excelの関数式をシンプルにするには
長く複雑になったExcelの関数式をシンプルにするには、どうしたらいいでしょうか。Excelの関数式の作成が「テスト問題における字数制限のない論述式の解答」で、あるとすれば、解答する側にとって簡単な問題にすることを考えるべきです。テストにおいては、論述による解答よりも選択式や穴埋め式で解答する方が簡単です。
問題文が簡潔であれば問題の趣旨を理解することが容易になります。例えば、条件分岐の条件とその結果をあらかじめ別にまとめておけば、セルの中で計算する必要がなくなり、IF関数を使用せず、表を縦方向に検索する「VLOOKUP関数」を使用して、関数式をシンプルにできます。
このような実際の解決方法は、自分で考え、工夫したり、インターネットで検索したりしてもいいでしょう。大切なことは「どうすれば他の人にとって分かりやすくなるか」を考え続けることです。
このコラムについて
ほとんどの企業が使っている表計算ソフト「Microsoft Excel」。便利なツールですが、本来の目的を超えて“使いこなし過ぎる”ことが、かえって業務効率を低下させてしまったり、業務の属人化につながってしまったりする場面があるのではないでしょうか。
このコラムでは、日常業務でよく見掛けるExcelの活用例を紹介しながら「こんな場面は脱Excelを考えた方がよい」「こういうExcelの活用法はお薦め」といった知見を紹介します。
村山 聡(むらやま・さとし)
1971年愛知県生まれ、名古屋大学経済学部卒、中小企業診断士。IT企業在職中に、単一業種においてキャリアを積んでいくことに疑問を感じ、どんな業界、職種でも通用する知識を得るべく中小企業診断士を取得。複数社を経て、現在の勤め先にて、コンサルタントとして、データを活用した業務効率改善に取り組む。
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“脱Excel”か“活Excel”か
ほとんどの企業が使っている表計算ソフト「Microsoft Excel」(以下、Excel)。便利なツールですが、本来の目的を超えて“使いこなし過ぎる”ことが、かえって業務効率を低下させてしまったり、業務の属人化につながってしまったりする場面があるのではないでしょうか。 このコラムでは、日常業務でよく見掛けるExcelの活用例を紹介しながら「こんな場面は脱Excelを考えた方がよい」「こういうExcelの活用法はお薦め」といった知見を紹介していきます。
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