AWSからAzure、AzureからAWSへ移る「クラウド移行ツール」の魅力と注意点:コストと互換性に課題も
MicrosoftやAWSなどのクラウドベンダーは、「Azure Site Recovery」「AWS Server Migration Service」といった自社クラウドサービスへの移行ツールを充実させることで、他ベンダーのユーザー企業を獲得しようとしている。
世間では、複数のクラウドサービスを使い分けるマルチクラウドや、オンプレミスとパブリッククラウドを使い分けるハイブリッドクラウドの採用がますます重視されている。これに伴い、ベンダー各社の競争が激化しつつある。Amazon Web Services(AWS)社は自社の同名クラウドサービス群への移行サービスを通じて、Microsoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」のユーザー企業のワークロードをAWSに移すことをもくろんでいる。ここでのワークロードとは、仮想マシン(VM)で実行するアプリケーションのことだ。
AWSへの移行サービス「AWS Server Migration Service」(AWS SMS)の元々の用途は、VMware「VMware vSphere」やMicrosoft「Hyper-V」といったサーバ仮想化製品で稼働する、オンプレミスのワークロードをAWSへ移行することだった。AWS社は、AWS SMSの機能を拡張する動きを見せている。
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AWS SMSは監視エージェントを使わないサービスだ。AWS社によると、IT部門はAWS SMSを利用してAzureのVMをグループにまとめることで、個別のサーバを複製したりアプリケーションの依存関係を解消したりする必要なく、アプリケーションを一つの単位としてAWSへ移行できるようになるという。
稼働中のサーバボリュームのレプリケーションを自動化することも可能だ。AWSは、この作業が大規模移行において非常に重要になるとも説明している。AWS SMS自体は無料で利用できる。ただしユーザー企業は自社のVMをAWSに移行したら、ブロックストレージサービス「Amazon Elastic Block Store」(Amazon EBS)やVMサービスの「Amazon Elastic Compute Cloud」(EC2)など、利用するAWSサービスに料金を支払うことになる。
クラウド移行機能の拡大を競うベンダー
2015年、Microsoftは「Azure Site Recovery」を、AWSでホストするVMのAzure移行用ツールとして位置付けた。AWSはこうしたMicrosoftの動きに対抗するかのように、AzureからAWSへの新たな移行サービスを用意している。
クラウドサービス市場で先行するAWSは、Azureとの差を維持し、さらに広げることを考えている。AWS社はAWS SMS以外の方法でもワークロードの移行サービスの提供に取り組んでいる。2019年1月には、クラウド移行ツールベンダーのCloudEndureを買収した。社内開発のペースが速いことでよく知られるAWSが、企業を買収することはめったにない。しかしCloudEndureの災害復旧、バックアップ、移行の各ツールは同社にとって魅力的だったようだ。CloudEndureはこうしたツールをSaaS(Software as a Service)の形式で提供しており、AWS SMSよりも複雑な移行シナリオに対処する。
Googleも移行ツールに投資している。同社は2018年に新興企業Velostrataを買収した。Velostrataの移行サービスは、以前AWS、Azure、「Google Cloud Platform」に対して利用できた。現時点でVelostrataのWebページの記載は「Google Cloudへの迅速、柔軟、安全な移行」だけになっている。
移行は魅力的だがコスト面での検討が必要
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