コラボレーションツールに期待が集まっても、意外と普及しないのはなぜ?:マンガで解説:ありすぎて泣けるIT課題
「Slack」や「Microsoft Teams」のようなコラボレーションツールは、組織の活性化に貢献する手段として期待が高まっています。しかし導入しようとするとスムーズにいかない場合も。普及が進まない理由とは。
「コラボレーションツール」は、特定の製品分野を指すというよりも、組織内のコミュニケーションや共同作業をITで実現する製品分野の総称です。主に次のような機能を備える製品がコラボレーションツールと呼ばれます。
- Web会議
- ファイル共有
- チャット
- 社内ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)
- プロジェクト管理
- スケジュール管理
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こうした機能は、以前は個別製品として提供されていました。近年は「Slack」や「Microsoft Teams」のように複数の機能を備えつつ、不足している機能を他の製品と連携して補う、ハブとなる機能を持つコラボレーションツールに注目が集まっています。
IT企業や、一般企業の情報システム部門など、ITリテラシーが高く先進的なIT活用に積極的な組織では、当然のようにコラボレーションツールを利用しています。組織の活性化を進める上で、このような機能を持つコラボレーションツールは役立つはずです。企業が成長期に入り、組織連携を推進しなければならない段階であればなおさらです。
コラボレーションツールの導入は、必ずしもスムーズに進んでいるわけではないようです。さまざまな導入事例を見ても、IT部門が社内で草の根活動をして、徐々に利用者を増やしていく方法で導入を推進していたり、一部の組織のみの利用にとどまっていたりする事例が散見されます。なぜ、このような事態が起こるのでしょうか。
このコラムについて
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組織の活性化が企業にとって必要な理由
組織の活性化は、今も昔も企業にとって重要な経営課題です。そもそも、なぜ組織の活性化が必要なのでしょうか。企業は成長期に入ると、売り上げとともに急増する仕事量に対処するために、多くの人員を新たに雇用することになります。このような状況では、仕事を効率的にこなすために組織ごとの役割分担を明確化することになります。これを「ラインアンドスタッフ組織」と呼びます。
業務遂行に直接関わる営業や生産といった業務は「ライン部門」(利益を生み出すプロフィットセンター)となり、人事や総務、情報システムといった管理業務は「スタッフ部門」(利益を生まないノンプロフィットセンター)となります。ライン部門内では、仕事の割り振りを円滑にするために上位の指示が下位の担当者に伝達しやすくなるよう「製品/サービス単位」「拠点単位」といった部門内組織を構築することが一般的です。
企業のライフサイクルが成長期から成熟期に移行すると、ラインアンドスタッフ組織だけでは対処し切れない課題が表出します。成熟期において市場は飽和状態に近くなっており、シェアの拡大と維持のために、競争する企業の製品/サービスとの差別化が重要となります。主力製品/サービスだけでは売り上げの拡大が困難になってくるのも、この時期です。
状況を打破するため、さらなる成長に寄与する柱となる製品/サービスの開発を迅速に進めるには、業務効率化を追求したトップダウン型の組織だけでは限界があります。顧客のニーズを収集、把握、分析し、集めた情報を基に既存製品/サービスの改良や改善、新たな製品/サービスの開発をするために、横断的に連携する組織が必要となります。
職能や事業内容、エリアなど、異なる組織構造の組み合わせで編成された「マトリックス組織」や、全社的な課題を解決するために事業部や役職問わず人材を招集した「クロスファンクショナル組織」といった組織形態は、前述の課題を解決すべく、ラインアンドスタッフ組織にチーム間の連携を強化する機能を取り入れた組織形態だと言えます。組織の細分化をさらに推し進めていくと、仕事に応じて水平的な関係を持って個人を集結させた小集団である「アメーバ組織」「ネットワーク組織」と呼ばれる形態になります。
企業がある程度の成長を遂げた後、さらに飛躍するためには、仕事の効率性重視にとどまらず、個々の組織が持つ機能や情報、アイデアを活用し、新たな価値を創造し続ける必要があります。進行手順が決まった企画会議のコミュニケーションや、エチケットが求められるメール形式のコミュニケーションは、かえって創造的なアイデアをつぶしてしまうことにもなりかねません。
必要なのは、ちょっとしたアイデアを即座に共有し、さまざまな組織の意見を集約してアイデアを練り上げていく仕事の進め方です。このような仕事の進め方に最適なツールがコラボレーションツールといえます。チャットでアイデアを共有したり、ビデオ会議を通じて共同編集でアイデアを資料にまとめたりする機能は、コラボレーションツールが得意とするところだからです。
コラボレーションツールが浸透しない2つの理由
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