医療機関が新型コロナ感染者数予測で実現した「データドリブン医療」とは?:Cleveland ClinicのCOVID-19戦略【第4回】
新型コロナウイルス感染症の感染者数を予測するデータモデルを開発した、米国の学術医療センターCleveland Clinic。同施設がデータモデルに基づいて構築した医療体制とはどのようなものなのか。その成果は。
学術医療センターCleveland Clinicは2020年3月、SAS Institute(以下、SAS)と協力して新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数を予測するデータモデルを共同開発した。データモデルを活用した分析に基づき、治療や入院を必要とするCOVID-19患者に備える医療体制を維持している。同施設でエンタープライズアナリティクス担当エグゼクティブディレクターを務めるクリス・ドノバン氏によると、このような体制を確保するにはデータモデル開発が不可欠だった。
第1回「医療機関がコロナ対策でデータ活用 『患者数の把握』より重要な効果とは?」、第2回「医療機関が新型コロナ予測モデルを開発 感染者データ不足にどう対処したか」、第3回「医療機関がデータで導き出した新型コロナ『最悪のシナリオ』と対処法とは?」に続く本稿は、Cleveland Clinicがデータモデルを医療にどう生かしているのかを紹介する。
迅速な意思決定を支えるデータモデル
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COVID-19に対処する準備を整え、データに基づく意思決定をする上で「データモデルは非常に役立った」とドノバン氏は説明する。「素早い対応ができるようになり、最悪の事態に至るかどうかを見極めるまで待たずに済んだ」(同氏)
2020年4月時点のCleveland Clinicは、患者の需要に応えることができている。2020年3月23日に米国オハイオ州が発出した自宅待機命令の効果で、同州北東部のCOVID-19患者数は他の地域ほど増加していない。そのためCleveland Clinicは、影響の大きかった他の地域に支援の手を差し伸べることができたという。
データモデルがこうした意思決定を支えたことで、ニューヨーク市に医師と看護師を派遣し、デトロイト市に個人用防護具を提供することも可能になった。「自分たちには十分な準備が整っているという実感がある」とドノバン氏は語る。データモデルはこうした準備態勢を整えるのに大きく役立ったという。Cleveland Clinicは現在も引き続きデータモデルを活用している。
SASはCleveland Clinicだけではなく、COVID-19と戦う他の組織とも協業している。SASでグローバルパブリックセクターおよび財務サービス担当ディレクターを務めるスティーブ・ベネット氏によると、SASは欧州やアジア各国の保健省、米国の州政府、世界中のさまざまな医療機関と協業しているという。「まだ公表できる段階にない」という理由で、ベネット氏は個別の名前を明らかにしなかったが、ドイツの連邦保健省をその一例に挙げる。「さまざまな場面で分析の必要性が高まっている。彼らは事前に計画して必要なものを準備するには、どうすればいいのかを知りたがっている」(同氏)
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