「デジタルマニュファクチャリング」の3大用途とは? 製造工程をIT化:「インダストリー4.0」の要
製造工程をIT化する「デジタルマニュファクチャリング」は、製造業にさまざまなメリットをもたらす可能性がある。特に大きな効果を発揮する3つの用途を紹介する。
製造業をITで革新する「インダストリー4.0」では「接続性」が大きな意味を持つ。接続性を実現する重要な鍵は、製造工程をIT化する「デジタルマニュファクチャリング」だ。
デジタルマニュファクチャリングは、コンピュータを利用してさまざまな生産工程のデータを連携させる。例えば3次元(3D)モデリング、シミュレーション、分析などのデジタル技術を利用することによって、生産やサプライチェーンなどの製造関連業務を効率化し、コストを削減して、市場への浸透といった目標を実現しやすくする。
本稿は、デジタルマニュファクチャリングの効果的な用途を3つ紹介する。
用途1.製品の設計
併せて読みたいお薦め記事
いまさら聞けないERPの基礎知識
- いまさら聞けないクラウドERPとオンプレミスERPの違い、できることとできないこと
- いまさら聞けないERPシステムの基礎知識、導入形態やコンポーネントを理解する
- いまさら聞けないSAPのERP 5大製品の特徴と最新動向をおさらい
製造業とIoT
- インダストリー4.0に乗り遅れたくない製造業が注目すべき「OPC UA」とは
- 「産業用IoT」に失敗する企業が陥る5つの落とし穴
- GEの産業用IoTプラットフォーム「Predix」がオフライン対応、その仕組みとは
エンジニアがプロトタイプを作成する際、発泡体や金属などの素材を使った物理的な模型の代わりに、デジタルマニュファクチャリングソフトウェアで仮想的なプロトタイプ「デジタルツイン」を作成できる。このデジタルツインを調べれば、実際の条件が設計の変更案にどう影響するか確認したり、潜在的な欠陥を発見したりするのに役立つ。
例えば自動車のエンジンのデジタルツインで、部品ごとの劣化速度の違いを示すことが可能だ。エンジニアはこうしたデジタルツインを調べて、問題の解決策を探すことができる。
用途2.工場の最適化
デジタルマニュファクチャリングの用途の一つに、工場の設計の最適化がある。デジタルマニュファクチャリングソフトウェアを使用することで、工場のフロアレイアウトを仮想的に作成して生産プロセスのシミュレーションができる。工場を建設する前に潜在的なボトルネックを調べ、無駄やダウンタイムの原因を見つけるのに役立つ。これにより実際に工場を稼働するとき、効率的な運用が可能になる。こうした仮想的なイメージを利用すれば、新しいインフラや設備を導入するコストをかけずに、多様な生産方法を試すことができる。
例えば工場で現在使用している機械よりも、効率の高い機械の話を聞いたとする。そこで工場の仮想イメージを作成し、古い機械を新しい機械に置き換えてみる。それからシミュレーションを実行して、新しい機械が生産に及ぼす影響を調べる。そうすれば新しい機械でコストが高くならないかどうか、危険がないかどうか、時間がかからないかどうか、といったことを事前に知ることができる。そのために実際にコストをかけたり、従業員を危険な目に遭わせたり、生産スケジュールを変更したりする必要はない。
用途3.スマートファクトリーの構築
デジタルマニュファクチャリングは、インダストリー4.0と密接に関連する「スマートファクトリー」の主要な構成要素だ。スマートファクトリーは、AI(人工知能)技術、ロボット工学、分析技術、ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)を活用した工場であり、その大部分が自律的に稼働する。問題が発生したら自己修復し、人に知らせることができる。スマートファクトリーは人の介在する余地を最小限にするため、従業員を面倒な反復作業から解放し、重要で意義のある仕事に専念できるようにするのも潜在的な利点だ。
スマートファクトリーの完成形では、デジタルネットワークで他の施設ともリンクし、
- サプライチェーン管理のサポート
- 別の施設の活動やニーズのモニタリング
- 複数の施設間の通信やコラボレーション
を実現すると考えられる。各施設を社内の全ての部署やサプライヤー、顧客とも連携させることにより、エラーのリスクを減らすだけではなく、発生したエラーに対して担当者による検知や修正を容易にする。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.