医療問題に取り組む非営利団体は「データウェアハウス」(DWH)をどう選んだのか:産科瘻孔を減らすデータ分析【中編】
世界各国で産科瘻孔の問題に取り組むOperation Fistulaは、データ分析の要としてデータウェアハウスの「Exasol」を重視している。同団体がExasolを採用したいきさつとは。
非営利団体Operation Fistulaは、世界各国の特定地域で発生する分娩(ぶんべん)外傷「産科瘻孔(ろうこう)」の問題に対処する中で、さまざまなデータ分析ツールを活用している。データ収集にはDimagiの「CommCare」、CommCareのデータ抽出にはAlteryxの「Alteryx Analytic Process Automation Platform」、データウェアハウスは(DWH)はExasolの同名ツール、データの視覚化はTableau Softwareの「Tableau」といった具合だ。前編「お産時の損傷『産科瘻孔』をデータ分析で防ぐ 非営利団体が選んだ製品は」に続く中編となる本稿は、同団体がExasolを導入したいきさつを紹介する。
ExasolはTableauとの連携とデータ構造化の要に
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Operation Fistulaが、Tableauの助成金ミッションプログラム「Tableau Foundation」から資金援助を受けるようになったのは2017年にさかのぼる。当時Tableau Foundationが支援していた非営利団体PATHのマラリア撲滅プロジェクト「Visualize No Malaria」を特集するホワイトペーパーで、Operation Fistulaの創設者兼CEOを務めるセス・コクラン氏のチームがExasolの存在を知ったという。
コクラン氏とExasolを引き合わせたのはニッコロ・シロン氏だ。シロン氏はWFP(国際連合世界食糧計画)でリージョナルデータコーディネーターを務めた経験があり、現在はデータ分析ベンダーMonteDelGalloの共同設立者兼最高執行責任者(COO)を務める。同氏は技術の観点でOperation Fistulaに必要なものを理解し、Exasolがうってつけだと考えた。そして同氏はExasolでビジネスインテリジェンスの責任者を務めるエバ・マリー氏とも面識があった。
「きっかけは個人的なつながりだった」とマリー氏は語るが、Operation FistulaはVisualize No Malariaの取り組みでExasolが使用されていることに関心を示していた。Exasolはコクラン氏の目指すことや目標に共感を覚えたという。「当社の技術で世界の状況を改善する手助けができるなら、断る理由はない。コクラン氏はすばらしいアイデアを多数抱えていて、その実現に協力したいと考えた」(マリー氏)
コクラン氏はExasolを活用すれば、Operation Fistulaが抱えるデータの問題を解決できると期待していた。「当団体にはデータ収集とデータ分析のフローを構築するエンジニアが必要だった。この役割をExasolが引き受け、見事に機能してくれた」(同氏)。Exasolはデータの構造化を通じて、CommCareからExasol、最終的にはTableauへとデータをシームレスに移行させることができるよう支援した。
Visualize No Malariaという導入事例があるExasolは、Operation Fistulaの分析フローをどのように構築すべきかという青写真を持っていた。Operation Fistulaが成長して、収集するデータが複雑になったときに、Exasolがどのようにチームをサポートするかも示すことができた。
Operation Fistulaの活動は拡大中
適切に機能するシステムを手に入れたOperation Fistulaは、その活動を拡大している。近年はマダガスカル共和国の50個のコミュニティーで、産科瘻孔に終止符を打つ新たな取り組みを立ち上げた。この取り組みには、新たな患者を迅速に治療し、治療を受けていない患者を減らして、産科瘻孔を分娩時外傷として周知する教育的な要素も含まれる。
現在Operation Fistulaは世界15カ国で活動しており、データは各国で重要な役割を果たしている。データの大半は患者を手術する医師から収集する。医師はCommCareにデータを入力し、入力データはExasolが設定したプロセスを経て、Tableauで視覚化される。
15カ国で入力されている全ての入力データには、リアルタイムでアクセスできる。「この事実には度肝を抜かれた。これは非営利団体では前代未聞だった」とコクラン氏は話す。Operation Fistulaは患者レベルのデータを入手して、地図上にデータを表示し、患者数を村レベルで確認できるようにして、行くべき場所を決めている。
データから分かることは特定エリアの症例数だけではない。現在は15歳未満で結婚している少女の数も確認できる。「産科瘻孔は女性と少女が社会的に見捨てられている場所で発生することがほとんどだ」とコクラン氏は説明する。Operation Fistulaは特定の国の地域ごとに産科瘻孔の割合を確認し、政府による投資が必要な場所を見極めている。
後編は、同団体がデータを活用して成し遂げたことを解説する。
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