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休校中の児童の食事を助ける「SAP4Kids」が“爆速”で開発できた理由教育機関と医療機関の「SAP Cloud Platform」事例【前編】

非営利団体GENYOUth FoundationとSAP北米法人は「SAP Cloud Platform」を使い、児童の食事や生活を支援するアプリケーション「SAP4Kids」を共同開発した。数週間という短期間で開発できた理由とは。

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 SAPのアプリケーション開発向けPaaS(Platform as a Service)の「SAP Cloud Platform」は、アプリケーションを迅速に開発する手段の一つだ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が引き起こす問題を解決するためのアプリケーション開発にも、SAP Cloud Platformが利用されている。

 米ニューヨークに拠点を置くGENYOUth Foundationは、全米各地の学校に健康や生活に関する教育プログラムとサービスを提供する非営利団体だ。GENYOUthはSAP Cloud Platformを使用して、学校の休校中に子どもが食事や日用品などの支援を受けるためのアプリケーション「SAP4Kids」(写真)を開発した。

 米国では3000万人にも及ぶ児童や生徒が、食事を取るのに学校給食を当てにしている。新型コロナウイルス感染症防止のために米国で学校の休校措置が取られ始めると、子どもの食事に問題が起きる。

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写真 自宅近くで給食を提供する学校を見つけることができるSAP4Kidsの画面《クリックで拡大》

児童の食事を支援するスマホアプリはどのように開発されたのか

 2020年3月、ワシントン州シアトル市がシェルターインプレース(屋内退避)勧告を発表して学校の休校が決まった。それとほぼ同時に、GENYOUthのCEOを務めるアレクシス・グリック氏は、子どもが十分な食事を取ることができない問題を目の当たりにした。

 GENYOUthがSAP4Kidsの開発に着手したのは、GENYOUthの教育プログラムの利用世帯が、自宅の近所で給食の提供を継続している学校を見つけられるようにするためだ。グリック氏はビジネスパートナーの1社であるSAP North Americaのプレジデントを務めるD.Jパオーニ氏に、アプリケーションの開発支援を依頼した。設計と開発に着手してから数週間後に、GENYOUthはPCやスマートフォンで利用できるWebアプリケーションとしてSAP4Kidsの提供を始めた。

 SAP4Kidsは2つの基本パーツで構成されている。1つ目は企業や学校が提供できる食べ物や日用品などの生活物資を提示するための「Assistance Entry Form」。2つ目は子どものいる世帯が生活物資を支援する企業や学校を地図から探せる「Resource Locator」だ(写真1)。

他のSAP製品との連携のしやすさが武器に

 SAP Cloud Platformは、SAPのアプリケーション開発ツールを簡単に使用できるように設計されている。SAP Cloud Platformの責任者を務めるギュンター・ロザメル氏は「SAP Cloud Platformをベースにすることで、SAP4Kidsの開発を迅速に進めることができた」と語る。

 ユーザーインタフェース(UI)の開発には、SAPのUI開発用ライブラリ「SAPUI5」を使用した。SAPUI5は複数のUIの部品を用意しているため「UIの全要素を独自に開発する必要がない」とロザメル氏は説明する。

 役に立つアプリケーションを開発する鍵を握るのは「開発中でも改善を進めることだ」とグリック氏は言う。SAP4Kidsの開発にSAPが携わっていることからも分かるように、SAP4Kidsは単なる生活物資の探索アプリケーションではない。例えば生活物資の需要と供給を管理するために、SAP4KidsはSAPの購買システム「SAP Ariba」と連携する。

 「現在のニーズに合ったリソースや技術を構築することは可能だが、反復作業と適応作業は継続して実施する必要がある」とグリック氏は語る。同氏は学校の構内に開発担当者を送り込み、学校や児童の生活の実情を把握しながらアプリケーションを開発したという。

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