AIを使いたい金融機関が頭を抱える「データプライバシー」「ツール習得」問題:金融業界のAI活用に立ちふさがる課題【後編】
金融業界の企業がAIツールを使いこなすには、解決すべき課題が複数ある。金融業界各社のリーダーが、現場で感じた課題をまとめた。
詐欺検出に人工知能(AI)技術を取り入れたツール(AIツール)を使用する際に「データプライバシー」が障壁となる――。保険会社American International Group(AIG)でシニアプロジェクトマネジャーを務めるベサ・アブラシ氏は、こう指摘する。データプライバシーは、データへのアクセス権限を誰が所有するか、誰がそのアクセス権限を認定するかといった問題だ。
「データプライバシー」問題の回避に必要なもの
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連載:金融業界のAI活用に立ちふさがる課題
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アブラシ氏は「オンプレミスシステムやクラウドサービスといったさまざまなシステム間でデータをやりとりする際には、データプライバシーに関する規制や手続きを順守しなければならない」と話す。金融業界の企業がデータプライバシーの問題を回避できるように、ベンダーはAIツールのインストール場所を自由に選択可能にする必要があると同氏は考える。
データプライバシーに関する規制は、共有可能なデータの種類をますます厳しく取り締まるようになっている。「氏名だけではなく、何もかもが個人情報として扱われる」(アブラシ氏)
AIツールの習得は手探り
再保険会社Guy Carpenter & Companyで保険計理人として働くディーン・マーカス氏は「再保険業界でAIツールがさまざまな問題を解決する可能性を秘めている」と語る。一方で複数ツール間の連携、適切なデータの用意、AIモデルのタイムリーな調整といった課題も挙げる。
「さまざまな課題がある中で、金融機関は競争力を維持するためにAIツールを使用せざるを得ない状況にある」。米銀行Wells Fargoのシニアリードマネジメントオフィサーであるミッシェル・ワン氏はこう語る。
ワン氏が働くWells Fargoのリスク管理部門は、データ分析にAIツールを使用している。同社はAIツールを導入したばかりで、「使い方を理解する際は、必ず問題に直面していると言っても過言ではない」と同氏は話す。「競争力を維持するには、AIツールの実験をする場を社内に確保する他ない」と同氏は考える。
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