「AzureじゃないとOfficeが高くなる」問題が緩和へ ただしAWSだと高いままの謎:Microsoft“独占的ライセンス規約“問題の行方【前編】
Azure以外のクラウドサービスでMicrosoft製ソフトウェアを利用する際、料金が高くなる――。Microsoftはこのライセンス規約の緩和を進める。ただしAWSとGCPは緩和の対象外だという。その背景は。
Microsoftは同社の「Microsoft Azure」ではない競合他社のクラウドサービスで、「Windows」「Microsoft Office」「Windows Server」「SQL Server」などの同社製ソフトウェアを使用するときに、利用料金が高くなるライセンス規約を設けてきた。同社は2022年5月、欧州の規制当局による調査を受け、このライセンス規約を緩和すると発表した。ライセンス規約の変更の実施時期は明らかにしていない。
今回のライセンス規約変更で恩恵を受けるユーザー企業は、限られる可能性がある。Microsoftは、Amazon Web Services(AWS)の同名サービスやGoogleの「Google Cloud Platform」(GCP)といった大手クラウドサービスには、今回の変更が適用されないことを明確にしたからだ。これらのクラウドサービスでMicrosoft製ソフトウェアを利用する際のコストは、依然として押し上げられたままになる。
「AWSだとOfficeが高いまま」の“なるほどの理由”
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「今回のライセンス規約の改定は、ハイパースケールクラウドベンダー(主要クラウドベンダー)以外のクラウドベンダーの機会とメリットを増やすことを目的としている」。Microsoftの広報担当者、スターク・サットン氏はこう言い切る。
Microsoftがこれまでのライセンス規約を見直す背景には、フランスのクラウドベンダーOVHとドイツのクラウドベンダーNextcloudが、欧州連合(EU)の欧州委員会(EC)に苦情を申し立てたことがある。OVHの苦情は「MicrosoftがOVHに、Microsoft製品に高額な利用料金を課す契約への署名を強要した」という内容だったと、通信社のBloombergは報じている。
ECはこれらの苦情を調査していることを認めている。通信社Reutersの報道によると、規制当局はクラウドベンダー各社とMicrosoftのユーザー企業に質問票を送り、Microsoftのビジネス慣行について意見を募った。
苦情に対処するために、Microsoftはより多くのクラウドベンダーが各社のインフラでWindowsやOfficeをホストしやすくする計画だ。Microsoftソフトウェアをサードパーティーのクラウドサービスで使用したいと考えるユーザー企業向けに、ライセンス規約の内容を交渉できるようにするとも述べている。ただしユーザー企業がAWSまたはGCPでOfficeやWindowsを使用する場合は、依然としてコストが高くつく。
Microsoftはクラウド事業ではAWSに後れを取っている。調査会社Synergy Research Groupが2022年2月に発表した調査結果によると、AWSはIaaS(Infrastructure as a Service)とPaaS(Platform as a Service)、プライベートクラウドサービスを合わせたクラウド市場で約3分の1のシェアを占めている。Microsoftのシェアは21%にとどまる。
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