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「5G」で新ビジネスは生まれるか? 米大学とVerizonが本気になった深い理由「5G」でイノベーションを創出【前編】

アリゾナ州立大学は通信大手Verizon Communicationsと提携し、米国で広がる「デジタル格差」の解消に取り組んでいる。イノベーション創出のため、どのようなプログラムを実施しているのか。

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 米国のアリゾナ州立大学(ASU)は通信事業者Verizon Communicationsと協力して、「5G」(第5世代移動体通信システム)活用によって社会の課題を解消するための研究を進めている。この取り組みの背景には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)以降、米国で広がる特有の問題がある。

「5G」でイノベーションを生み出す 大学とVerizonが向き合う問題とは?

 ASUの学部や学生は、NASA(米航空宇宙局)のような機関と協力し、先駆的な研究や戦略的パートナーシップの締結、起業家精神の育成、経済発展の推進を目的とし、イノベーション(技術革新)実現のための取り組みを主導する。

 Verizonと提携し、ASUは5Gを活用してイノベーションの創出を目指すイノベーションハブ「Learning Futures」を設立。これは、学生と学部、起業家、パートナー企業が協力し、5Gを活用した教育体験の企画からテスト、構築までを支援するものだ。

 米国ではCOVID-19のパンデミックでデジタル格差が深まりつつあり、「デジタルエクイティー」(デジタル技術の利用機会に関する公平性)を確保することが国家の議題に上っている。アリゾナ州では、20万人を超える学生を含めた100万人もの住民がインターネットに常時接続できていない。ASUはこうしたデジタル格差の解決策の開発を目指し、さまざまな取り組みを実施している。

 Learning Futuresで開始する最初のプログラムは、2022年2月始めにスタートした「Digital Equity Jam」だ。Verizon Communicationsの他、クラウドベンダーのAmazon Web Services(AWS)とネットワークベンダーのInseegoがこのプログラムを後援する。プログラムに参加する各チームは、デジタル格差を解消するためのユースケースの開発を競う。ユースケースは次の技術を活用する。

  • 5Gを活用したVerizon Communicationsの超広帯域無線通信(UWB:Ultra Wide Band)
  • コンピューティングをモバイルネットワークに組み込む「モバイルエッジコンピューティング」(MEC)

 プログラムは医療や気象、貧困、人権、教育などに焦点を当てる。勝利したチームには以下を提供する。

  • プロジェクトの立ち上げ資金
  • クリントン財団の下で2005年に設立された社会革新プロジェクト「CLINTON GLOBAL INITIATIVE」(CGI)や、大学発の起業を支援する団体VentureWellと提携した、夏期集中の起業支援トレーニングの受講権利
  • 設立したベンチャー企業を、2022年秋にCGIへ売り込む許可

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