PCが売れなくなっても「SSD」が売れる理由:NAND型フラッシュメモリ価格変動の裏側【前編】
インフレやパンデミック、コンシューマー市場の不振など複数の要素が連鎖して、「NAND型フラッシュメモリ」や「SSD」の市場に影響を与えている。今後の売れ行きに関する、業界関係者の見方は。
NAND型フラッシュメモリの価格が下落に転じた。業界関係者はこの価格下落には驚いていないが、今後の見通しには慎重な姿勢だ。PCの需要低迷やインフレなど幾つかの動向が連鎖する中、NAND型フラッシュメモリやSSDの売れ行き、価格はどうなるのか。
特に“あのSSD”の需要は旺盛?
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SSD技術開発の動向
世界的なインフレの加速、ロシアとウクライナの戦争、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)などが起きて、サプライチェーンの乱れが続いた。そうした中でスマートフォンやPCの需要が減退する一方で、NAND型フラッシュメモリの生産量は高水準で推移してきた。
市場調査会社TRENDFOCUSのバイスプレジデントを務めるドン・ジャネット氏は、「さまざまな商品の需要が底を突いており、NAND型フラッシュメモリの価格はそれにつられて下落している」と述べる。このような市場動向を背景に、NAND型フラッシュメモリベンダーにとっては、収益を維持するのが容易ではなく、厳しい四半期が数回続く可能性があるという。
NAND型フラッシュメモリの価格下落の中でも、エンドユーザー向けSSD価格については当面は下落しないという点で、専門家の意見は一致している。
複数の要因が背景に
COVID-19の流行当初、中国における生産停止やロックダウン(都市閉鎖)によってサプライチェーンが正常に機能しなくなり、部品不足を引き起こした。それがNAND型フラッシュメモリの価格下落の発端だとジャネット氏は言う。部品を調達しにくくなったことに続いて、2021年末からインフレが強まった。それと同時に、NAND型フラッシュメモリの主要用途であるPCやスマートフォンの需要が減少したという。
Samsung Electronicsは2022年第2四半期(4〜6月期)の決算において、NAND型フラッシュメモリの出荷量が当初の業績見通しを下回ったと説明した。同社がその理由に挙げたのは、スマートフォンなどモバイル端末用NAND型フラッシュメモリの需要減退だった。2022年は、モバイル端末やPCの需要低迷が続く可能性が高いと同社はみる。
キオクシアも同様に、需要低迷が続くとの見方を示す。同社は2022年8月、ウクライナ戦争やサプライチェーンの混乱、インフレと景気後退によってPCやスマートフォンの需要が減衰し、その結果としてNAND型フラッシュメモリの出荷量は落ち込む可能性があると投資家に説明した。同社は一方で、「クラウドサービスの需要や企業のITシステムへの投資に支えられて、データセンター向けSSDの需要は堅調に推移する見込みだ」と、2022年度第1四半期(4〜6月期)の決算発表で説明した。
短期的な先行きについて、キオクシアは慎重な見方を示す。特に懸念するのは、部品不足や景気後退への懸念から、同社の顧客が在庫調整に動くことだ。「2022年下半期にその悪影響が出る可能性があるため、業界は先行きを慎重にみる必要がある」(同社)
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