DXの“勝ち組”医療機関を困らせた「駄目なネットワーク」の笑えない惨状:米国医療機関が挑む「ITの変革」と「ITによる変革」【第1回】
米国の医療機関Wexner Medical Centerがデジタルトランスフォーメーション(DX)促進に向けて、ネットワークの改善に着手した。背景にはどのような課題があったのか。
Ohio State University(オハイオ州立大学)に付属する医療センターのWexner Medical Center(以下、WMC)は、医療業界を導くリーダーになろうとしている。膨大な数の患者に質の高い医療を提供するために、WMCが目を向けたのが、ネットワークの改善だった。
DXを阻む“駄目なネットワーク”の惨状
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全米で有数の学術医療センターになり、画期的な医療サービスを提供する――。WMCで副最高情報責任者(Deputy CIO)および最高技術責任者(CTO)を務めるシジ・アテコヤ氏は、WMCの目標をこのように語る。WMCは、高いコストをかけるのではなく、効率を高める方法で、この目標の達成を目指す。そのための優先事項の一つに、デジタルトランスフォーメーション(DX)を据えている。
DXに向けたWMCのこれまでの取り組みは、成果を上げていたという。だが「ネットワーク構成が複雑だという課題が残っていた」とアテコヤ氏は話す。以前のWMCのネットワークは、異なるデバイスや構成が混在し、管理が複雑になっていた。そのためIT部門のスタッフはネットワークの全容をほとんど可視化できないまま、膨大な数のデバイスとデータを管理せざるを得なかった。
WMCは施設や拠点を積極的に拡大させていた。そのため「スケーラブルなネットワークが不可欠だった」とアテコヤ氏は言う。WMCは2022年度だけでも、2万4000人以上の従業員、5万8000人以上の新規入院患者、200万人以上の外来患者、16万5000件以上の遠隔診療患者を抱え、それぞれに関するデータを収集、保管している。
毎年、WMCの利用者は増え続けているという。WMCが診察する患者や、従業員は「さらに数千人増える可能性がある」とアテコヤ氏は予想する。
ネットワークのスケーラビリティーを重視したWMCは、ネットワークの構成や運用を自動化する「ネットワーク自動化」の導入を検討した。第2回は「ネットワーク自動化を導入すると、仕事が奪われるのではないか」というネットワーク担当者の懸念に、アテコヤ氏が回答する。
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