クラウドの“王者”AWSが宇宙を開拓 人工衛星でこなしたミッションとは?:宇宙空間に広がるクラウド技術【前編】
AWSは、宇宙空間で利用するアプリケーションに自社のクラウドサービスの活路を見いだしている。同社が発表した、宇宙での実験結果を取り上げる。
クラウドベンダーはクラウドコンピューティングをさまざまな分野へと押し広げようとする中で、宇宙空間にも進出しようとしている。Amazon Web Services(AWS)も例外ではない。どのような狙いがあるのか。
新市場を開拓するAWSの“宇宙実験”とは
2022年末、AWSは演算および機械学習(ML)用のソフトウェア一式を、軌道上の人工衛星に配備する“宇宙実験”に成功したことを発表した。同社は、地球低軌道(LEO)での宇宙物流と輸送を担う企業D-Orbitの協力を得て実験を実施した。
10カ月に及ぶ実験においてAWSの実験チームは、人工衛星が収集した宇宙空間のデータを、収集後すぐに分析できる体制を構築。人工衛星のセンサーが収集したデータをさまざまなMLモデルに読み込ませ、雲や山火事の煙といった空中の事物、建物や船など地球上の物体を識別することに成功した。
AWSで航空宇宙および人工衛星事業部門のディレクターを務めるクリント・クロシエ氏は、同社開催の年次イベント「AWS re:Invent 2022」に登壇し、実験をこう振り返った。「今回の実験は、宇宙空間でのミッションを支援する上でクラウドサービスがいかに大きな役割を果たすかの一例を示したと言える」
宇宙空間において、これまで不可能だったことがクラウドコンピューティングで可能になる例として、クロシエ氏は以下を挙げる。
- 宇宙ステーションからの人工衛星の発射、修復、操作
- 小惑星での採掘
- 宇宙空間でのエンターテインメント事業や旅行事業
「2040年前後までには、宇宙空間での取り組みの全てが高度なクラウドコンピューティング技術を必要とするようになる」とクロシエ氏は見込む。それに向けたAWSの目標は、「顧客が必要とするあらゆる場所にクラウドコンピューティングを届けること」だという。
中編は、宇宙事業の別分野におけるクラウドコンピューティング活用の展望を紹介する。
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