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Googleの非正規従業員が「約1.5倍の昇給」を勝ち取れた理由Googleと労働者の戦い【後編】

Googleで検索アルゴリズムの評価を実施する外部企業の従業員が、労働組合と共に同社と給与交渉を実施し、約1.5倍の昇給を勝ち取った。“勝因”は何なのか。当事者に聞いた。

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 ジェイ・ブキャナン氏は、人工知能(AI)技術のトレーニングをサービスとして提供するRaterLabs(Appen傘下)に雇用され、Google親会社のAlphabetで働いている。ブキャナン氏は、Alphabetの従業員(契約社員や派遣社員を含む)を代表する労働組合Alphabet Workers Union-Communications Workers of America(AWU-CWA)の組合員でもある。

“低賃金からの脱却”を成功させた労働組合員の思い

 AWU-CWAは、Googleで働くRaterLabs従業員の賃金が上がらない問題をGoogleとRaterLabsに提起し、異例の昇給を勝ち取った。“勝利”の理由は。

 Googleで検索アルゴリズムのトレーニングとテストを担当する「評価担当者」。RaterLabsの従業員は、Googleでこの評価担当者として活躍している。こうした評価担当者の中には、Googleで働いているにもかかわらず、10ドル程度の時給しかもらっていない人もいた。この状況を問題視したAWU-CWAは、RaterLabs従業員と共に給与交渉を実施。Appen、およびGoogleに対して、14.0〜14.5ドルへの昇給の約束を取り付けた。

 ブキャナン氏は「待ちに待たされた昇給を労働者が勝ち得た唯一の理由は、組織化に際して複数あったハードルを乗り越えて団結し、共通する要求を提示したからだ」と語る。今回の賃上げは「数千人もの労働者の生活水準を大幅に改善する可能性がある」と、同氏はその成果を評価しつつ、「これで終わりではない」と強調する。「非正規従業員の一員として約束されている基本給と福利厚生(注1)を遂行する責任を、Googleの全契約業者に負わせることを、Googleに要求し続ける」(同氏)

※注1 Googleは2019年4月、同社の米国従業員の給与と福利厚生の基準を設定。非正規従業員を含む全員に最低時給として15ドルを支払うことを約束した。他にも福利厚生として、12週間の有給休暇、8日間までは有給休暇として扱われる傷病休暇、保健医療提供、年間5000ドルの学費支給などを発表している。

 AWU-CWAの幹部を務めるソフトウェアエンジニアのパルル・クオル氏は次のように付け加える。「今回の勝利で明らかになったのは、労働者は雇用形態によって分断される状況を続けたくないと考えていることと、団結すれば非常に多くのことを実現できるということだ」

 2021年にもAWU-CWAの組合員は、データセンター事業者Modisの労働者と団結し、当時支払いが停止していた危険手当を取り戻す交渉をした。AWU-CWAの組合員が昇給を勝ち取ったのは、RaterLabsの事例が初めてとなる。

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