ChatGPT競合「Bard」をGoogleが“絶対に成功させないといけない”のはなぜ?:過熱する「AI検索」の覇権争い【第3回】
MicrosoftがOpenAIの技術を「Bing」に組み込んで検索エンジン市場での勢力拡大を図る中、Googleは「ChatGPT」競合の「Bard」を投入し、即座に反撃の姿勢を示した。Googleを突き動かすのは、ある“不安”だ。
ITベンダーの間で、テキストや画像などを生成するAI(人工知能)技術「ジェネレーティブAI」(生成型AI)を自社製品に活用する動きが活発化している。MicrosoftもジェネレーティブAIの活用に取り組む一社だ。同社はAIベンダーOpenAIの技術を、自身の検索エンジン「Bing」に組み込み、機能を強化しようとしている。OpenAIは、AIチャットbot(AI技術を活用したチャットbot)「ChatGPT」の開発を手掛けたAIベンダーだ。
検索エンジンの雄であるGoogleは、こうした動きに危機感を抱いている。
だから「Bard」を成功させなければならない
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ジェネレーティブAIを取り巻く動き
Googleは消費者向け検索エンジン市場を席巻し続けてきた。Webサイトのアクセス解析に基づく市場シェア(ページビューベース)を調査、公表するStatCounterによると、2023年4月における世界の検索エンジンのシェアはGoogleの「Google検索」が92.63%でトップだった。2位のMicrosoft「Bing」は2.79%にとどまる。シェアは、StatCounterが自社サービスで収集した月間50億件以上のページビューに基づく。
OpenAIとMicrosoftの提携は、Google検索の広告モデルにとって致命的な脅威になり得るという見方がある。OpenAIの技術を組み込み、AIチャットbotの機能を利用可能にしたBingが、Google検索に置き換わる可能性があるからだ。
危機感を抱いたGoogleは、言語モデル「LaMDA」の軽量版を搭載したAIチャットbot「Bard」を公開した。同社はBardを「正確さや適時性の問題に妨げられない、思慮深く、正確な対話型検索エンジンだ」と説明する。ChatGPTは原稿執筆時点で、2021年9月以前の情報しか参照できないという制限がある。
調査会社Nemertesの創設者でアナリストのジョナ・ティル・ジョンソン氏は「依然としてGoogleは検索エンジン『Google検索』において、広告表示とエンドユーザーのクリックに基づく収益を上げることに専念している」と指摘する。Google検索は検索結果のページに広告を表示し、エンドユーザーがその広告をクリックした場合に、広告主に料金を請求する収益モデルを採用している。
Googleにとって、ChatGPTなどのAIチャットbotの普及は、存亡に関わる問題だ。「『Google it』(ググる)が『ChatGPT it』になれば、Googleの広告収入はなくなり、会社は崩壊する」とジョンソン氏は語る。「人々がGoogle検索からBardへとシームレスに移行すれば、Googleは検索市場の地位を守ることに成功する」(同氏)
次回は、Googleが考えるBardの特徴と、ChatGPTとの違いを整理する。
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