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大学の研究者が熱望した「自分専用の5G」と“無線LANにはできない”活用法プライベート5Gが大学を変える【前編】

NTTとCisco Systemsはドイツのアーヘン工科大学に、5Gをユーザー組織が運用できる「プライベート5G」を導入した。干渉の発生しにくい電波を自由に扱えるという利点がある。

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 NTTとCisco Systemsは2023年2月、通信事業者以外の組織が5G(第5世代移動通信システム)を自営網で利用できる「プライベート5G」を提供し、各産業の変革を加速することを目的に協力すると発表した。

 両社の協業は2023年2月27日〜3月2日にスペインで開催された移動体通信の展示会「Mobile World Congress 2023」で発表された。そのわずか数週間後、両社はドイツのアーヘン工科大学(Rheinisch-Westfälische Technische Hochschule Aachen)のプライベート5Gを、実証試験段階から実運用段階へと移行した。アーヘン工科大学にプライベート5Gを構築する際には、ネットワーク機器ベンダーのAirspan Networksも協力している。

無線LANではなく「プライベート5G」だから実現する活用法

 アーヘン工科大学は、学内の研究プロジェクトを支え、育成するためにはキャンパス内に安定した構内ネットワークが必要だと考えている。ネットワークを可視化し、制御できる仕組みも必要だ。

 プライベート5Gが利用する電波を、他のネットワークは利用できない。そのため干渉の恐れがあまりない。アーヘン工科大学は自らネットワークを運用することで、建物内のデータ通信と音声通信を個別に制御する方針だ。

 キャンパス内の9カ所の施設にいる研究者はそれぞれ、プライベート5Gによって、自身の研究活動に最適な無線通信を利用する。これによって、アプリケーションへの接続が安定するメリットが見込める。プライベート5Gは通信速度や遅延といったネットワーク性能の面でも、幾つかの重要な研究プロジェクトに最適な無線通信を提供できると同大学は考えている。

 アーヘン工科大学は、欧州連合(EU)が資金を提供する研究でプライベート5Gの使用を計画している。例えば以下の研究がある。

  • 位置情報に基づく緊急時の交通ルート算定
  • 病院の手術室におけるリアルタイムデータ伝送

 同大学は、無線LANの代わりとしてプライベート5Gを構内ネットワークに使用できるかどうかについても評価中だ。


 後編は、アーヘン工科大学がプライベート5Gの構築において採用した「Open RAN」の設計について解説する。

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