SSDが売れない“暗黒期”に生まれた希望の「新型SSD」とは:新たなSSDの道を開拓?【前編】
Micron Technologyは、データセンター向けのSSDとして2つの新たなラインアップを用意した。SSDとNAND型フラッシュメモリの市場が低迷する中、同社の新SSDにはどのような意図があるのか。
「SSD」や、その記録媒体であるNAND型フラッシュメモリの市況低迷が続いている。ベンダーの業績は軒並み落ち込んでいる状態だが、ベンダーは新製品投入の手を緩めていない。Micron Technologyが新たに発表した2つの新SSDは、市況を加味しつつ、2つの方向で特徴を持たせている点が興味深い。具体的に見てみよう。
普通のTLCとはやや違う「新型SSD」の正体
2023年5月、Micronはデータセンター向けのSSD新製品として「Micron 6500 ION NVMe SSD」(以下、Micron 6500 ION)と、「Micron XTR NVMe SSD」(以下、Micron XTR)を発表した。Micron 6500 IONは、データセンター向けの一般的なストレージアレイでの利用を前提にしたSSD製品だ。メモリセルを232層に積層したNAND型フラッシュメモリを搭載する。
Micron 6500 IONの記録方式は、1つのメモリセルに3bitを格納する「TLC」(トリプルレベルセル)となっている。ただしMicronによれば、価格水準は1つのメモリセルに4bitのデータを格納する「QLC」(クアッドレベルセル)と同等になる。メモリセルの積層数の増加がコスト抑制に役立っているという。
一方のMicron XTRは、1つのメモリセルに1bitのデータを格納する「SLC」(シングルレベルセル)のNAND型フラッシュメモリを搭載している。SLCは一般的に、TLCやQLCよりもデータ読み書き性能に優れる。同SSDは、書き込み性能を重視するアプリケーションに適した製品だと言える。
Micronの2つの新たなラインアップについて、調査会社Gartnerのリサーチ担当バイスプレジデントであるジョー・アンスワース氏は、ある意図があると指摘する。特に注目すべきは、コスト効率重視のMicron 6500 IONだ。「現状の市況からニーズをうまくくみ取ろうとした製品だ」(アンスワース氏)
NAND型フラッシュメモリ市場は、2022年後半から需要の低迷が顕著になった。価格が下落傾向にあり、NAND型フラッシュメモリの主要ベンダーの業績は軒並み悪化している状況だ。アンスワース氏によれば、市況が好転するまでには、しばらくかかる可能性がある。
市況が好転するときはいずれやってくる。「市況が上昇に転じるときに備えて、ベンダーは最高のラインアップを用意する」とアンスワース氏は言う。Micron 6500 IONはコスト効率重視、Micron XTRは読み書き性能重視のSSDだ。ユーザー企業にとっては、いずれか一方のSSDを採用するだけではなく、コスト効率と性能のバランスを考慮して両SSDを併用することも選択肢になる。
中編は、Micron 6500 IONの特性をより具体的に紹介する。
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