HDDとは別物になる“新型SSD”の正体:SSD新時代は来るのか【第1回】
ストレージにおけるI/Oなどの性能は、一般的にHDDよりもSSDの方が優れている。だがSSDには“ある限界”があった。それを突破しようとする取り組みとは、どのようなものなのか。
SSDをHDDの仕様から解放して、その本来の価値を引き出そうとする動きがある。HDD用として使われてきたストレージインタフェースの限界を取り払い、SSDとCPUの関係を根本から見直すことがその狙いだ。具体的に見てみよう。
HDDから解放される“新型SSD”の正体
企業がNAND型フラッシュメモリを搭載したストレージを使用したい場合は、HDD用のストレージインタフェースにSSDを接続するのが一般的だ。ただしこうした方法では、NAND型フラッシュメモリ本来の、I/O(入出力)などの性能を十分に引き出しにくい。
KIOXIA Americaの技術担当バイスプレジデントであるスコット・ステッツァー氏は、「NAND型フラッシュメモリには、HDDの限界にとらわれていては得られないさまざまなメリットが存在する」と述べる。KIOXIA Americaは、フラッシュメモリベンダーであるキオクシアの米国子会社だ。
キオクシアは、ハイパースケーラー(ハイパースケールデータセンターを運営するクラウドベンダー)向けに、新しいストレージインタフェース技術として「Software-Enabled Flash」(SEF)を設計した。SSDとCPU間のより優れた通信を実現するためだ。キオクシアは2020年にSEFの開発を開始し、そのプロジェクトを2022年に業界団体Linux Foundationに寄贈した。
SEFの開発が始まった背景には、SSDの最適な使用方法を定義し、それを実用化することへの期待があった。調査会社Coughlin Associatesのプレジデントであるトム・コフリン氏は「ドライブの動作とストレージデバイスが備える機能をユーザー企業が操作できることは、大きな意味を持つ」と語る。ただしSEFを活用するには、ユーザー企業はSEF用の新しいハードウェアを採用する必要があり、SEFが早く広く普及するかどうかに影響する可能性があるとコフリン氏は指摘する。
2022年8月に開催されたフラッシュメモリのカンファレンス「Flash Memory Summit 2022」で、キオクシアはSEF用の新型SSDを展示した。このSSDの特徴は以下の通り。
- 「E1.L」を採用
- E1.Lは、ストレージインタフェース規格「NVMe」(NVM Express)準拠のSSD用フォームファクター「EDSFF」(Enterprise and Data Center SSD Form Factor)の仕様。
- 「QLC」(クアッドレベルセル)を採用
- QLCは、1つのメモリセルに4bitを格納する記録方式。
キオクシアはまだこの新型SSDの一般提供を開始しておらず、本格的に採用してくれるユーザー企業を探しているところだ。
変更履歴(2023年1月11日18時35分)
記事掲載当初、SEFの開発が始まった背景について、一部の説明に誤りがありました。おわびして訂正します。本文は修正済みです。
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