Excel新関数「XMATCH」と「MATCH」の違いとは? 比較表で確認しよう:“脱Excel”か“活Excel”か:Excel 2021の新関数「XMATCH」解説【中編】
「XMATCH」は「MATCH」の強化版として「Excel 2021」で登場しました。XMATCHとMATCHは、何が違うのでしょうか。XMATCHの強化点を比較表で確認します。
Microsoftの表計算ソフトウェア「Microsoft Excel」には、指定したセルの範囲から値を検索する「MATCH」があります。「Excel 2021」で加わった新しい関数「XMATCH」は、MATCHの強化版と言える関数です。XMATCHは、MATCHと比べてどこがどのように変わったのでしょうか。
比較表で分かる「XMATCHとMATCHの違い」はこれだ
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筆者がXMATCHとMATCHで、それぞれ下記の式を作成して試したところ、いずれもエラーにならず、結果が返ってきました。こうした基本的な使い方では、XMATCHとMATCHの違いはないと考えられます。
配列{5,4,3,2,1}から、検索値として「1」を指定して相対位置を返す
XMATCH(1,{5,4,3,2,1},0):結果として5が返る
MATCH(1,{5,4,3,2,1},0):結果として5が返る
XMATCHとMATCHの書式における違いを比較してみましょう。それぞれの書式は以下の通りです。
- XMATCHの書式
- XMATCH(検索値,検索範囲,一致モード,検索モード)
- MATCHの書式
- MATCH(検索値,検索範囲,照合の種類)
表1はExcelのヘルプにある説明に基づいて、各関数の引数の違いを比較表にしたものです。
引数名 | 省略 | XMATCH | MATCH |
---|---|---|---|
検索値 | 不可能 | 検索する値 | 検索する値 |
検索範囲 | 不可能 | 検索するセルの配列または範囲 | 検索するセルの範囲 |
一致モード/照合の種類 | 可能 | 一致の種類(以下から指定) ・0:完全一致(既定値) ・-1:完全一致または次に小さい項目 ・1:完全一致または次に大きい項目 ・2:「*」「?」「~」が特別な意味を持つワイルドカードの一致 |
照合の種類(以下から指定) ・0:完全一致 ・-1:完全一致または次に小さい項目 ・1:完全一致または次に大きい項目(既定値) |
検索モード | 可能 | 検索の種類(以下から指定) ・1:最初から最後まで検索(既定値) ・-1:最後から最初まで検索(逆方向の検索) ・2:昇順で並べ替えた検索範囲に対してバイナリサーチ(昇順ではない場合はエラー) ・-2:降順で並べ替えた検索範囲に対してバイナリサーチ(降順ではない場合はエラー) |
― |
表1の通り、XMATCHとMATCHには2つの違いがあります。
1つ目は検索結果の返し方です。XMATCHの引数の中に「一致モード」があり、この値は省略可能です。省略した場合は、検索値の値と完全一致した場合のみを結果として返します。一方MATCHでは、同様の引数として「照合の種類」があります。照合の種類の値を省略した場合、完全一致または次に大きい項目を結果として返します。
ExcelでのXMATCHやMATCHといった検索用関数の用途は、完全一致の検索が主だと考えられます。XMATCHでは完全一致が規定値になっていますので、完全一致を指定したい場合に引数の一つを省略できる点は改善だと言えます。
2つ目は新しい引数です。XMATCHには、MATCHにはなかった「検索モード」という引数が加わりました。検索モードは、検索の方法を指定する引数です。
「二分探索」とも呼ばれるバイナリサーチは、検索対象のデータが昇順、または降順に並んでいることが前提です。まず検索範囲の中央値を調べ、検索値が中央値よりも小さければ、中央値より前の検索範囲から中央値を調べる――といった具合に、徐々に検索範囲を狭めながら検索値を調べます。大量のデータを検索範囲にした場合は、通常の検索よりも高速に検索結果を引き出せる傾向があります。
後編は、XMATCHの用途を考えます。
このコラムについて
ほとんどの企業が使っている表計算ソフト「Microsoft Excel」。便利なツールですが、本来の目的を超えて“使いこなし過ぎる”ことが、かえって業務効率を低下させてしまったり、業務の属人化につながってしまったりする場面があるのではないでしょうか。
このコラムでは、日常業務でよく見掛けるExcelの活用例を紹介しながら「こんな場面は脱Excelを考えた方がよい」「こういうExcelの活用法はお薦め」といった知見を紹介します。
村山 聡(むらやま・さとし)
1971年愛知県生まれ、名古屋大学経済学部卒、中小企業診断士。IT企業在職中に、単一業種においてキャリアを積んでいくことに疑問を感じ、どんな業界、職種でも通用する知識を得るべく中小企業診断士を取得。複数社を経て、現在の勤め先にて、コンサルタントとして、データを活用した業務効率改善に取り組む。
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