商用Linux「RHEL」の対抗馬“SUSE”が打ち出すこれからの技術とは?:CEO単独インタビュー「新生SUSEが狙うもの」【第2回】
新しい経営体制を整え、アジアを中心にビジネス成長を目指すLinuxベンダーSUSE。今後は何に商機を見いだし、どう事業拡大を図るのか。同社の新CEOに聞いた。
企業向けLinuxディストリビューション(配布用パッケージ)ベンダーSUSEはアジア太平洋地域(APAC)を中心に事業拡大を目指している。背景にあるのは、競合Red Hatが同社企業向けLinuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)のソースコードへのアクセスを、Red Hatのユーザー企業に限定することを決めたことだ。2023年5月に就任したSUSEのダークピーター・ファン・レーベンCEO(最高経営責任者)はどのような戦略を描いているのか。
LinuxベンダーSUSEが語る“これからの技術”とは
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連載:CEO単独インタビュー「新生SUSEが狙うもの」
Red Hatの強みとは何か
―― SUSEの今後の計画や、APACでの事業拡大に向けた戦略は何ですか。
ファン・レーベン氏 当社には「Kubernetes」(コンテナオーケストレーションツール)の管理ツール群「Rancher」をはじめ、競争力のある製品が豊富にある(注)。そのため、事業拡大のポテンシャルがある。最近は、エッジ(ユーザー端末に近い所)におけるコンテナ管理に最適化した軽量のKubernetesディストリビューション「K3s」の導入が広がりつつある。当社製品に確実なニーズがあると捉えている。
※注:SUSEはRancherを手掛けるRancher Labsを2020年に買収。
SUSEは、ユーザー企業が複数のOSSの管理ができることを重視している。これは当社製品に限らない。複数のOSSの管理をしやすくすることは、ユーザー企業が強く求めていることだ。当社は、どれくらい普及しているかにかかわらず、さまざまな種類のLinuxを管理できるようにしてきた。Kubernetesの分野でもそれと同じことに取り組んでいる。
管理しやすさの追求は当社にとって重要なテーマだ。ユーザー企業はOSSベンダーに対して「選択肢」を求めている。要するに1つのシステムだけではなく、複数のシステムを管理したいというニーズがある。当社はOSSの開発コミュニティーとの連携に注力し、OSS管理について非常に深い知識を得てきた。だからこそ、ユーザー企業のニーズに応えられると自負している。
SUSEのポートフォリオには、大規模に採用されているRancherだけではなく、コンテナ用セキュリティツール「NeuVector」もある。このツールはコンテナ間で何が起こっているかを把握するために、通信の中身を精査する「ディープパケットインスペクション」(DPI)を実施する。アプリケーションが送受信する機密情報をはじめ、通常は把握しにくいことを検知する。セキュリティの向上に役立つ機能だ。
これらの製品はSUSEの将来にとって極めて重要だ。市場に浸透させることに、さらに力を入れる。OSSの開発コミュニティーやパートナー企業との協力も重視している。例えば、Intelとはコンフィデンシャルコンピューティング(利用中のデータを暗号化する技術)と呼ばれる分野で共同開発に取り組んでいる。実用化すれば、データを暗号化した状態でアプリケーションを実行できるようになる。金融といったセキュリティの規制が厳しい業界で、コンテナ活用の追い風になると捉えている。
SUSEはAI(人工知能)技術を利用可能にするために、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC:高性能計算)への投資にも注力している。将来はRancherにAI技術を取り入れ、コンテナを構成する際にAI技術の力を使えるようにする。AI技術の利用は、OSS市場での当社の立ち位置を強固にするためにも重要だ。それに並行してSUSEのブランディングも強化したいと考えている。
第3回は、SUSE がRHELとの互換ディストリビューションを開発することを決めた背景を取り上げる。
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