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SSDの新たな挑戦「CXL接続」はストレージの希望なのか?研究開発で分かるSSDの挑戦【第1回】

CXL接続SSDはまだ研究開発段階にあるに過ぎないが、それが実現した場合にはストレージの設計やコンピューティング在り方を大きく変える可能性がある。どのようなものなのか。

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 業界標準のインターコネクト(相互接続)規格「Compute Express Link」(CXL)を活用する研究開発が進んでいる。その目的の一つは、SSDの動作を高速化することだ。

 CXLを活用することで、揮発性メモリの一種「DRAM」(Dynamic Random Access Memory)よりも安価で、より容量の大きなメモリプール(プログラムごとのメモリ確保機能)を確保する「永続メモリ」(PMEM)が実現する。永続メモリとは、メモリとストレージの双方の特徴を持つメモリを指す。

 CXL接続SSDが普及する上で鍵になるのは、ストレージインタフェース規格「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)で接続するSSD(以下、NVMe接続SSD)との違いだ。

CXL接続で実現する「新型SSD」の挑戦とは?

 Intelは、永続メモリとして提供していた不揮発性メモリ「Intel Optane」(以下、Optane)のサポートを終了している。つまりCXL接続は、Optaneを対象にしていない。CXL接続を活用する一つの方法になるのは、ストレージの業界団体Storage Networking Industry Association(SNIA)が開発したプログラミングモデル「NVM Programming Model」(NPM)だ。

 NPMは、不揮発性メモリの読み書き速度の高速化を目的にしている。CXL接続SSDと、NPMによる次世代プログラムを組み合わせることは、新型SSDと、未来のコンピューティングシステム実現の後押しとなるはずだ。

 汎用(はんよう)インタフェース規格「PCI Express」(PCIe)と、CXLの明確な違いは分かりにくい。実際のところ信号レベルでの違いはないが、プロトコルは異なる。CXLが使用するプロトコル3種の一つ「CXL.io」は、標準的なPCIeのI/O(入出力)デバイスで利用できる。CXLはPCIeよりも高速なプロトコルだと言える。

 CXLは、「ファーメモリ」(サーバのマザーボード外にあるメモリ)に大規模なメモリプールを確保し、「ニアメモリ」(サーバのマザーボード上に存在するメモリ)の容量を拡張するために開発された。それらのメモリは全て、サーバのメモリアドレス空間(メモリアドレスによってアクセスできるメモリ領域)にマッピングされ、CPUの「メモリ管理ユニット」の管理下に置かれる。

 CXLではキャッシュコヒーレンシ(複数のキャッシュの一貫性)を管理する必要がある。これはPCIeとは異なる。ニアメモリやファーメモリにある任意のメモリアドレスの内容は、CPUのキャッシュメモリにあるそのメモリアドレスのレプリカ(複製)よりも古いことがある。これは、他のCPUがそのメモリアドレスを読み取ろうとすると、大きな問題を引き起こす可能性がある。そのため、CXLのキャッシュコヒーレンシの機能は、他のCPUのキャッシュメモリに新しいデータが存在する場合、古いデータをCPUに転送することがないように制御する。

 ソフトウェアは、CXLのプロトコル「CXL.mem」または「CXL.cache」を使い、メモリにバイトセマンティクス(文字列をバイト数単位で指定すること)でアクセスする。ソフトウェアは、ファーメモリをニアメモリと同じように扱う。つまりCXL接続SSDである場合、SSDもメモリであるかのようにソフトウェアとCXLのプロトコルで通信する。

 NVMe接続SSDへのアクセスは、ブロック(複数のメモリセルを束ねたページの集合体)単位になる。この通信は、CXLではCXL.ioが担う。

 CXLはニアメモリとそれより低速なファーメモリの、異なるアクセスタイミングを管理する。この点を重視する結果、CXL接続SSDは標準的なSSDと同じくらい低速で動作する可能性がある。CXLはメモリセマンティクス(メモリアクセスの順序のルール)を使用して、CPUへのデータ通信を管理する役割も担う。こうした動作による遅延の原因を最小限に抑えるために、CXL接続SSDは比較的大きなキャッシュメモリを搭載すると考えられる。


 第2回は、Samsung Electronicsが公開したCXL接続SSDを見る。

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