Appleで何が起きている? 相次ぐ“労組結成”の真相:英国Apple Storeの労働問題【第1回】
英国ホワイトシティーとサウサンプトンにあるApple Storeで新たに労働組合が結成された。しかしApple側が組合活動を阻止する動きがあるという。
英国グラスゴーにあるApple直営店舗「Apple Store」が労働組合を結成したことを受け、ホワイトシティーおよびサウサンプトンのApple Storeスタッフは、経営陣に労働組合を結成する意向を通知した。
グラスゴー店の場合は、投票によって労働者の過半数が英国の労働組合「GMB Scotland」による組合結成に賛成し、その後Appleの承認を得ていた。Apple StoreスタッフがIT連合労働者組合(UTAW:United Tech and Allied Workers)に加入した例もある。UTAWは通信労働者組合(CWU:Communication Workers Union)の下部組織であり、CWUはソフトウェアエンジニアから清掃員に至るまでIT業界で働く労働者を代表する組合だ。
英国各地で盛り上がりを見せる、Apple Storeの労働運動
ホワイトシティー店の労働者は2022年12月に、Appleに対して組合結成の承認を求めた。ただしApple社内には「勧誘と配布を禁止するポリシー」があった。権利を主張する過程で、ポリシー違反を避けようとして交渉を一時中断していたものの、その後再開している。
サウサンプトン店の労働者は2023年9月に組合結成を通知し承認を要請したが、本稿執筆時点(2023年10月)ではAppleはまだ応じておらず、労使双方の交渉が続いている。
UTAWによると、ホワイトシティー店の労働者が組織結成の承認を要請した2022年12月以降、各店舗でのUTAWの存在感は倍増している。組合結成に賛成した人々は、Appleに対して次のような要求を表明している。
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「労働者が組合結成に大きな関心を寄せているにもかかわらず、Appleは『労働組合つぶし』のさまざまな戦術を駆使して組合結成を思いとどまらせようとしている」とUTAWは主張する。例えばUTAW加入者から次のような報告があるという。
- 従業員が職場で組合について話し合うことを禁止される
- 反組合活動を周知するチームミーティングや、上司と1対1の面談が開催される
- 「労働組合を結成すると福利厚生を失う」ことを示唆される
UTAWは「Apple Storeが導入している監視技術と自動化技術が、同社の規律を支えている」と考察する。これらの仕組みがあることで、人員削減をしても否定的な報道をされることはない、というのがUTAWの主張だ。こうした従業員監視の仕組みは、障害を抱える労働者への配慮が欠けており、大きな問題があるとUTAWは考えている。
労働組合の主張を報じた公共放送局BBC(英国放送協会)に対して、Appleは次のように回答している。「当社は、顧客やチームに優れた体験を提供することに長年取り組んできた。当社は、英国でも特に高額な給与を支払っている企業の一つだ。当社の貴重なチームメンバーに提供する支援の一環として、業界をリードする福利厚生を定期的に強化している」
第2回は、あるApple Store従業員が労働組合への加入を決意した理由と、「労働組合つぶし」に遭うまでの経緯を紹介する。
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