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英国歳入関税庁が「脱メインフレーム」を決断するしかなかった理由脱レガシーに取り組む英国政府とKyndryl

英国歳入関税庁が、メインフレームからクラウドサービスに移行するために投資を決断した。投資額は15カ月間で440万ポンドにもなる。なぜ英国政府はクラウド移行を急ぐのか。

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 英国歳入関税庁(HMRC:Her Majesty's Revenue and Customs)は、ITインフラサービスプロパイダーのKyndrylに15カ月間で440万ポンドを支払う契約を結んだ。この契約は、HMRCが利用しているメインフレームおよびメインフレームで稼働しているサービスの一部管理をKyndrylに委託するもの。加えて、HMRCがITインフラをクラウドサービスに移行するための準備に取り組み、Kyndrylの子会社でITコンサルタントのKyndryl Consultもサポートする。HMRCがクラウドサービスへの移行に投資する理由とは。

「脱メインフレーム」するしかない――英国歳入関税庁の決断とは

 HMRCは過去に公会計委員会(Public Accounts Committee)から、レガシーシステムの利用に費用を掛けていることに批判を受けている。2021年、同委員会はシステムのモダナイゼーション(最新化すること)に投資するようHMRCに要請した。同委員会によれば、HMRCはモダナイゼーションには投資せずにレガシーシステムの保守に時間と費用を掛けることで、結果的にHMRCの業務を“重大なリスク”にさらしている。

 こうした背景からHMRCは、以前からワークロード(アプリケーション)をパブリッククラウドに移行する取り組みを進めている。2023年現在のHMRCはクラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)のヘビーユーザーとして知られている。HMRCは2021年に、AWSと約3年で9400万ポンドの契約を結んだ。

 HMRCは今回、英国政府の政府機関向けクラウドサービス調達フレームワーク「G-Cloud」を通してKyndrylと2024年9月末までの契約を結んだ。この契約には進行中のクラウド移行の支援や技術提携が盛り込まれている。Kyndrylは、HMRCのメインフレームサービスの一部を管理し、これらのアプリケーションをモダナイズしてクラウドサービスに移行する方法についてのコンサルティングも提供する。

 メインフレームのモダナイゼーションはKyndrylが担当する。一方、コンサルティングを担当するのはKyndrylの子会社でITコンサルティングのKyndryl Consultだ。

 Kyndryl Consultはアプリケーションのモダナイゼーションとクラウド移行支援以外にも、HMRCのロードマップ策定を支援する。HMRCのアプリケーションのモダナイゼーションと業務オペレーションの改善について、Kyndryl ConsultはMicrosoftおよびソフトウェアベンダーのAdvanced Computer Software Groupと協力して今後数十年のロードマップを作成する。

 Kyndryl UK and Irelandのプレジデントを務めるジョン・チェンバース氏は次のように強調する。「今回の契約は、英国の公共部門を支援し、英国市民により良い成果をもたらすことへの当社の継続的なコミットメントを示すものだ」

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