5Gではなく衛星通信が「本当に使える無線WAN」なのはなぜ?:“あの衛星通信”が変える働き方【後編】
多様な働き方を実践することが企業にとっての優先事項になる中で、企業は「無線WAN」に関心を寄せるようになった。5Gよりも優先的な回線になる可能性がある、人工衛星による通信を解説する。
企業は有線接続によるWAN(ワイドエリアネットワーク)だけでなく、目覚ましい技術進化を遂げる「無線WAN」にも関心を向けて業務用の通信方法を検討するようになった。候補に挙がるのは「5G」(第5世代移動通信システム)や「4G」(第4世代移動通信システム)ばかりではない。
5Gより使える「衛星によるあの通信」とは?
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連載:“あの衛星通信”が変える働き方
無線WANとは
人工衛星を介した衛星通信は企業にとってのメリットにつながる技術進化を達成している。今後は5Gではなく、衛星通信が企業にとっての優先的な選択肢に挙がる場合が考えられる。人工衛星の種類を踏まえて、どのような通信が可能なのかを確認しよう。
人工衛星は、主に地球を周回する高度によって以下の3種類に分けられている。
- 低軌道衛星(LEO)衛星
- 地上から高度2000キロ未満を周回する衛星。約90〜120分で地球を1周する。
- 中軌道(MEO)衛星
- 地上から2000〜約3万6000キロの軌道を周回する。低軌道衛星よりも広いエリアをカバーすることができるGPS(全地球測位システム)用の測位衛星がこの軌道を飛んでいる。
- 静止軌道(GEO)衛星
- 地上から約3万6000キロの高さを周回する。静止軌道を周回する衛星の速度は、地球の自転速度と一致するため、地上からは衛星が静止しているように見える。静止軌道より上を回る高軌道(HEO)衛星も存在するが、数は限られている。
この中で注目すべきは低軌道衛星だ。低軌道衛星は、従来の衛星通信が利用していた中軌道衛星や高軌道衛星よりはるかに地上に近い。そのため、低軌道衛星コンステレーションによる衛星通信は、費用、パケットロス、遅延の問題を低減している。
低軌道衛星は真の「どこでも」仕事ができる環境を実現できるか?
企業はテレワークを導入し、「どこからでも仕事ができる」働き方を後押しするようになった。その一方で低軌道衛星通信サービスは、米国本土ではすでにほぼ全ての場所で利用でき、世界各国で利用可能なエリアを拡大している。
こうした背景から、エンドユーザー側でも衛星通信によるインターネット接続への関心が強くなってきている。従来、「どこでも働ける」という仕組みは、ネットワーク技術の制約により実質都市部だけの特権だった。低軌道衛星通信サービスは都市部や地方部を問わず、本当の意味で「どこでも」仕事ができる環境を実現できるだろう。
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