プログラミング言語「Carbon」は「C++」より何が優れているのか:C++からの移行先になる?【前編】
「Carbon」は、「C++」を基盤とした実験的なプログラミング言語だ。C++から進化した特徴や、現時点での制限など、Carbonの概要を紹介する。
「Carbon」は、プログラミング「C++」の一部の特徴を受け継ぎつつ、独自の仕組みを備えるオープンソースの汎用(はんよう)プログラミング言語だ。Carbonは実験段階にあり、労力を掛けてC++で書かれたソースコードを書き換える必要がない、魅力的な代替言語の選択肢になろうとしている。以下でCarbonの機能と欠点を紹介しよう。
「Carbon」が「C++」と違う点はこれだ
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Carbonとは何か
Carbonは、2022年開催のソフトウェアカンファレンス「CppNorth」で、Googleが支援するオープンソースプロジェクトとして初めて紹介された。開発者のチャンドラー・カルース氏は、Carbonを「C++の実験的な後継言語」と位置付けている。カルース氏によるとCarbonは、「開発チームが大規模で複雑なC++プログラムを管理しやすくするために設計されたプログラミング言語」だ。
Carbonの最大の特長は、C++に存在するメモリの脆弱(ぜいじゃく)性の解消を目的とした仕組みを備える点だ。具体的には、以下の技術や機能を駆使している。
- 配列(同一データ型の集合)の境界チェックを定期的に実行することによるエラー防止
- 境界チェックは、変数が配列の範囲に収まるかどうかをチェックする仕組みのこと。
- デリファレンスを介したメモリアクセスの禁止
- デリファレンスポインタは、ポインタ(データの格納先を示す値)の参照先をたどってデータを読み出すこと。
- ガベージコレクションなどの操作によって解放されたメモリへのアクセス禁止
- ガベージコレクションは、不要なデータを削除して空き容量を増やす仕組みのこと。
- 誤ったデータ型に関する保護
- プログラム内で、変数やオブジェクト(データと処理をまとめたもの)に対して、それらが扱うべきではないデータ型の値を代入したり、異なるデータ型に対する操作を実行したりすることを禁止する。
- 同時アクセスを分離するロック機構
- プログラムの別々の箇所から同じメモリにアクセスして競合状態が発生することを防ぐ。
- プログラム実行時に、正確な挙動を実現するための制御機能である「セマンティクス制御」を含む。
より安全なメモリ管理を実現するために、Carbonは以下の仕組みを備える。
- スレッドローカルストレージ
- 各スレッド(プログラムの実行単位)で独立して変数を保持する仕組み。
- アトミック操作
- 複数のスレッドやプロセスを1つの動作としてまとめて扱う仕組み。
- ロックフリー構造
- スレッドがデータにロックを掛けないようにしつつ、複数のスレッドが同時に同じデータにアクセスしても競合しないようにする仕組み。
開発者はこれらの仕組みを利用することで、複数のスレッドが同じデータにアクセスする際の安定性を保ちやすいソースコードを記述できる。
次回は、「Rust」とC++と対比しながらCarbonの特徴を紹介する。
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