“もう限界”の「古き良きストレージ」に代わる選択肢はこれだ:生成AIでストレージも変わる【前編】
生成AIの開発や学習には、大量のデータが欠かせない。そのために企業は、より低コストで効率的にデータを保管できるストレージを検討するようになった。どのようなストレージなのか。
AI(人工知能)技術で画像や文章を自動生成する「生成AI」(ジェネレーティブAI)のビジネス活用が広がっている。自社の用途に応じて生成AIをカスタマイズしたいと考える企業は、AIモデルの構築や追加学習が視野に入る。そうしたAIモデルの学習には、大量の教師データが不可欠だ。
生成AIがもたらすこうした流れがストレージの需要を押し上げると同時に、企業が必要とするストレージが変わるという見方がある。どういうことなのか。有識者の見解に沿って解説する。
生成AIの盛り上がりで引っ張りだこな“あのストレージ”
近年の企業向けストレージ市場では、構造化データと非構造化データをまとめて保管する「データレイク」や、機械学習用データのニーズが購入をけん引してきた。「生成AIへの注目により、企業のIT製品/サービスにおけるストレージの優先順位が高まっている」と、調査会社Futurum Groupのシニアアナリストであるデーブ・ラッフォ氏は説明する。「AIモデル用のデータを保持するには、より多くのストレージが必要であることをストレージベンダーはアピールしたがっている」とラッフォ氏は言う。
2024年に有力な選択肢として浮上する可能性があるのが、クラウドサービスとオンプレミスのサーバを組み合わせたハイブリッドストレージだ。独自の生成AIを開発することが難しい企業は、生成AI用のAIモデルを提供するクラウドサービスやクラウドストレージを使うことになる。専門家の間では「生成AIブームに乗るために、ほとんどの企業がオンプレミスのサーバと大容量のクラウドストレージの組み合わせに落ち着く」という見方が一般的だ。
コンサルティング企業Silverton Consultingの創設者兼プレジデントであるレイ・ルチェシ氏は、生成AIの開発と導入が進むと、今後もハイブリッドストレージは選ばれ続けると考える。「生成AIは既に普及しており、教師データが不要になることはない」とルチェシ氏は話す。
期待も需要も膨らむハイブリッドストレージ
企業が自社サーバに独自の生成AIを構築する動機はさまざまだ。生成AIを使う上では避けられない著作権侵害やデータプライバシーに関する懸念を回避することや、特定の業界に特化した生成AIを入手することが目的になるという。ハイブリッドストレージは、企業がクラウドサービスを利用しながら、規制を順守できる助けになる。
TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)によると、企業によるクラウドストレージへの投資は続く見通しだ。AIモデルの学習、特に既存の大規模言語モデル(LLM)を利用せずに企業独自のLLMを開発する場合は、大量のデータが必要だ。エッジデバイスで収集したデータをオンプレミスのデータセンターから集約する際、クラウドストレージを利用することは一般的な選択肢になっているという。こうした用途におけるクラウドストレージは、大規模なデータ分析や機械学習に使う用途を上回るとESGはみる。企業がクラウドファーストの方針を採用する理由の一つが、総所有コスト(TCO)の削減だ。
次回は、ストレージベンダーと企業における変化を解説する。
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