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TeamViewerは遠隔で取得する「ユーザー組織のデータ」をどう扱っているのかリモートアクセスの老舗「TeamViewer」の戦略【後編】

リモートデスクトップツールを手掛けるTeamViewerは、ユーザー組織の多様なデバイスから取得したデータを業務プロセス改善に生かす支援を実施している。取得したデータをどのように取り扱っているのか。

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 リモートデスクトップツール「TeamViewer Remote」を提供するTeamViewerは、同社が保有するリモートデスクトップ技術の応用に取り組んでいる。ワークフロー管理やスマートファクトリーといった新しい分野に技術を応用し、事業の第2、第3の柱を育てるのが狙いだ。

 TeamViewerのCEOオリバー・スタイル氏は「当社の競争上の強みは、ユーザー組織のさまざまなデバイスとTeamViewer Remoteを接続できることにある」と述べる。TeamViewer Remoteを通して取得するデータを、同社はどのように取り扱うのか。スタイル氏と同社の最高製品技術責任者を務めるメイ・デント氏に聞いた。

セキュアかつ合理的なデータ活用

── TeamViwer Remoteが取得するデータの保有や活用に関する方針は。

スタイル氏 使用状況に関するデータを全く保有しない場合もある。例えば、遠隔で機械を制御する場合、当社は接続に関するデータを保有しない。医療機器から医療機器メーカーに渡る情報をTeamViewer Remoteが取得しないのであれば、データに関するリスクに当社が関与することはほとんどない。この場合、データを分析するのは医療機器メーカーか、病院などのユーザー組織だ。

 当社はユーザー組織に対し、検査工程や製造工程を改善する支援も提供している。その支援をする場合は、TeamViewer Remoteでさまざまなデータを取得し、取得したデータを使用して手順の最適化を支援する。そのためのデータの使用契約をユーザー組織と結ぶことになる。

デント氏 これまで当社は、データの処理に積極的ではなかった。「やりとりされているデータを把握しない」ことが、当社のセキュリティの基本方針だからだ。ただし一部のユーザー組織は自動化に関心を示しており、その自動化のためにはデータが必要になることがある。例えば何らかの問題が発生した場合、人の担当者が対処する前にAI(人工知能)技術を活用したエージェントがまず対処するといった場合だ。このようなユースケースでは、当社がユーザー組織に対し、データに関してさまざまな洞察を提供できるかどうかを検討している。

 注目しているのは、異なる言語を話すテレワーカーの会話をリアルタイムで翻訳して字幕を提供する機能だ。このような機能は、騒がしい環境で役立つ可能性がある。現場作業員に対し、正しい手順や必要なデータを提示できる方法を考えている。

── リモートアクセス技術、現場で働く工員を支援するAR技術、スマートファクトリーといった柱がある中で、特に重要視している事業は。

スタイル氏 当社が最初に手掛けたのはITサポートの領域だった。デント氏が率いるチームはITサポートに関する製品をそろえており、抱き合わせ販売の機会もある。ユーザー組織には、TeamViewer Remoteを使用しているときに使える機能が他にもあることを伝えている。全世界で約60万件以上のユーザー組織を抱えるTeamViewer Remoteが依然として当社の最大の柱であることに変わりはない。

 OT(Operational Technology:制御技術)とITの融合という新たな領域での取り組みは拡大している。当社が取り組んでいるプロジェクトの一つが、メキシコにある医薬品の卸売会社が関与する取り組みだ。この卸売会社は現場のピッキング作業にスマートグラス(カメラや通信機能などを搭載した眼鏡型のヘッドマウントディスプレイ)を導入し、作業の自動化や高速化、ミスの削減などを目指している。

 革新的なプロジェクトの一つとして、韓国の自動車メーカーHyundai Motor Company(現代自動車)のシンガポール工場において、特定の組立工程で働く作業員のワークフロー改善、品質制御、作業効率向上に取り組んでいる。ユーザー組織は製造プロセスの最適化とデジタル化に投資する傾向にあり、この分野が当社の売上高増加の源だ。

── アジア太平洋地域で力を入れている市場は。

スタイル氏 当社にとって最も大きな市場の一つは、2012年に拠点を開設したオーストラリアだ。オーストラリアのように面積が大きな国では、リモートという概念に対して共感が得やすい。2022年には韓国のソウルに拠点を開設した。韓国のユーザー組織は、国の成長を後押しするために、産業のイノベーションを求められている。こうした事情から韓国は当社にとって絶好の市場だと言える。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国では、インドネシアやマレーシアの他にシンガポールでも変化が見られた。当社技術の導入事例として、インドネシアの鉱山に遠隔操作車両を導入しているユーザー組織がある。これらの国は概して新技術の導入に積極的であるため、さまざまな国のユーザー組織が当社の技術を導入している。

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