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「Python離れ」まで起きかねない“GIL廃止”の波紋PythonからGILを取り除く是非【後編】

「Python」の「GIL」廃止計画が、コミュニティーに波紋を広げている。技術的な課題について、PythonユーザーやPython創設者はどう考えているのか。

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 プログラミング言語「Python」において、データの整合性を保つ仕組み「GIL」(Global Interpreter Lock)が廃止されようとしている。GILを廃止することで、複数のCPUコアにまたがる処理が実行可能になる見込みだ。だがこの変更は技術的な課題だけでなく、Pythonコミュニティー全体に大きな影響を与える可能性があるという懸念の声がある。何が問題なのか。

Python離れが起きかねない「GIL廃止」の影響

 GILの廃止が深刻な問題をもたらしかねない理由の、5つ目と6つ目は次の通り。

理由5.ユーザーが流出する可能性がある

 他のプログラミング言語から、GILを廃止したPythonに移行することは、不確実さを伴う。Pythonとそれを取り巻くツールはしばらく安定せず、PythonユーザーもGIL廃止の影響に対処するため、稼働中のPythonプログラムを書き直さなければならない。

 一方で「Mojo」など、ランタイム(実行環境)がPythonと互換性のあるプログラミング言語の中には、既にGILを廃止しているだけではなく、追加機能を提供しているものもある。現状の、GILが有効なPythonで記述したソースコードが問題なく動作する代替言語もある。PythonコミュニティーがGILを廃止すれば、不安定な状況を懸念したり、代替言語に魅力を感じたりしたPythonユーザーが、Pythonから離れることが懸念される。

理由6.単純にうまくいかない

 PythonからGILを廃止する際に起こり得る問題の一つは、恐らくうまくいかないことだ。「以前にも同じ試みがあったが、残念な結果に終わった。だから、私はGILの廃止にあまり力を入れたくない」――Pythonの生みの親グイド・バン・ロッサム氏は、2007年にこう発言した。2023年、コンピュータサイエンティストであるレックス・フリードマン氏のポッドキャストのエピソードで、ロッサム氏は当時に感じたことを繰り返した。専門家でさえ、GILの廃止がうまくいくかどうかに確信が持てていないということだ。


 PythonからGILを取り除く試みが成功することを願っているが、筆者にとってその試みは大きな間違いのように思える。

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