API開発でなぜ「TypeSpec」を使う? メリットとデメリットを解説:API記述言語「TypeSpec」を徹底解説【後編】
API記述言語「TypeSpec」の長所と短所の解説を通して、どのような開発者やプロジェクトに適しているのかを探る。TypeSpecをスムーズに利用開始するためのセットアップ手順も解説する。
Microsoftが開発した「TypeSpec」は、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を定義および記述する上で役に立つAPI記述言語(API DL:API Description Languages)だ。
TypeSpecはまったく新しい概念のツールではない。これまでも「OpenAPI」や「RAML」といったAPI DLや、「Postman」のようなAPI開発ツールが長年利用されてきた。では、TypeSpecはどのような開発者やプロジェクトに適しているのか。TypeSpec独自のメリットとデメリットと併せて解説する。
TypeSpecの長所と短所は? 誰向けなのか?
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他のAPI開発ツールと比べた際のTypeSpecのメリットとして、以下のようなものがある。
- ソースコードが簡潔
- TypeSpecの特徴の一つに、ソースコードの簡潔性と可読性の高さがある。OpenAPIではソースコードは冗長化する傾向にあり、こうした特徴が好きではない開発者にとって、TypeSpecは魅力的な選択肢となる。
- フォーマット変換が可能
- TypeSpecはOpenAPIの他、「JSON Schema」「Protocol Buffers」(Protobuf)など複数のフォーマットにコンパイル(変換)できる。汎用(はんよう)性があるため、チームやプロジェクトごとに異なる形式のAPIが必要となる場合に便利だ。
- 習得が容易
- 「TypeSpecは学習が簡単だ」と感じる人は一定数いる。特に、TypeSpecと構文や思想が似たプログラミング言語「TypeScript」を使っている開発者はすぐに慣れるだろう。ソースコードを自動でフォーマット(整形)してくれる機能や、エラー検出機能も付いているため、TypeScriptに精通していない開発者でも使いやすいツールと言える。
TypeSpecに技術的なデメリットはほぼ見当たらない。ただし、TypeSpecはMicrosoftのエコシステムと密接に関連しており、それ以外のエコシステムでは採用が進んでいない点に注意が必要だ。Microsoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」向けにアプリケーションを開発しない場合や、Microsoft製ではないコーディングツールを使いたい開発者にとって、TypeSpecは互換性に乏しく扱いづらい可能性がある。
そのため、OpenAPIなど、より広く普及していて、特定のエコシステムに依存しない言語が適切なケースもある。ただし今後、企業がTypeSpecを採用し、より多くの製品で使われるようになれば、この状況は変わるはずだ。
TypeSpecを使うには? 準備方法を解説
TypeSpecを使用する際は、統合開発環境(IDE)またはTypeSpecと互換性のあるコーディングツールが必要だ。2024年11月時点では、選択肢は「Visual Studio Code」(VS Code)と「Visual Studio」に限られている。
どちらかのツールをインストールした後、TypeSpecの拡張機能をインストールする。加えて、以下のnpmコマンドを用いてTypeSpecをインストールする。
- npm install -g @typespec/compiler
インストールが完了したら、新しいTypeScriptプロジェクトを作成して、以下のコマンドを実行する。
- tsp init
コンソールに表示される一連の質問に答えた後、以下コマンドを用いて依存関係をインストールする。
- tsp install
これでTypeSpecのセットアップは完了だ。開発者は選んだコーディングツールを用いてAPIを作成できるようになる。
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