「スキル評価をAIに任せた」結果見えてきたうれしい効能とは?:人事のAI活用事例
人事部が抱えがちな課題として、従業員の離職やスキル不足がある。その解決の一翼を担おうとしているのがAI技術だ。人事業務におけるAI活用ポイントを事例から探る。
人工知能(AI)技術の活用がさまざまな業務領域で広がっている。採用や人事評価、スキル育成などを含む人事領域もその一つだ。AI技術は人事業務でどう活用されているのか。2024年9月に米ラスベガスで開催されたイベント「HR Technology Conference」で、金融サービス事業者や化粧品メーカーが自社におけるAI技術活用の事例を紹介した。
スキルを評価するのは人間ではなくAI――そのうれしい効能とは?
「人材の採用や昇格において、組織は役職や肩書を重んじる傾向が強い」。金融サービスを手掛けるNorthwestern Mutual最高人事責任者(CHRO)のドン・ロバートソン氏はそう述べる。しかしビジネスを取り巻く環境が激変し、競争力を高めなければならない中で、重視すべき要素は変わってきている。ロバートソン氏が挙げるのは、スキルや知識だ。「役職を持っているからといって、スキルが高いとは限らない」(同氏)
AI技術はスキルアップに関して組織にさまざまなメリットをもたらす可能性がある。特にAI技術が力を発揮できるのは、人材マッチングだとロバートソン氏は言う。自社が求めているスキルセットと合わない人材を採用すれば、業務遂行に支障が出る可能性がある他、早期離職によるコストの無駄を生みかねない。AI技術によって応募者のスキルをより厳密に把握できれば、そうしたミスマッチを防ぎやすくなる。
米国の大手飲料メーカーKeurig Dr Pepperは、Eightfold AIの人材管理システムを導入。この人材管理システムはAI技術を取り入れており、Keurig Dr Pepperは同システムを活用することで、人間ではなくAI技術が従業員のスキルを評価する仕組みを構築した。
「新しい人材管理システムの導入に当たって反発もあった」。Keurig Dr Pepperの人事担当シニアバイスプレジデントのアリッサ・チェイス氏はそう振り返る。同社はAI技術に対する従業員の不安を払拭するために、Eightfold AIのシステム導入に合わせ、従業員向けのスキル向上制度を導入した。制度では、従業員の腕を磨くための支援を提供する他、人事管理システムではスキルをどう扱うかに関する具体的な方針を示しているという。「スキルを重視することと、スキルの評価にAI技術を活用することに対する従業員の理解を促進できた」とチェイス氏は述べる。
新しい人材管理システムの導入は、Keurig Dr Pepperに主に以下のメリットをもたらしているという。
- 経営陣は「ほしい人材」「将来、必要な人材」が社内にいるかどうかを把握できる。
- 従業員は目指しているキャリアパスに自分のスキルが合っているかどうかを確認できる。これは従業員のモチベーション低下や離職防止につながる。
化粧品メーカーEstee Lauder Companies(ELC)も、AI技術を駆使してスキル育成に取り組んでいる。同社グローバルバイスプレジデント(エンタープライズラーニング/リーダーシップ開発担当)のトゥリー・ホワイト氏は、「こうした『スキルインテリジェンス』は経営層だけではなく、キャリアアップを考える社員にとっても価値がある」と語る。
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