検索
特集/連載

「キオクシアがついに上場」で再び脚光を浴びる、“SSD逆風と合併話”ストレージ市場で飛び交う憶測

キオクシアが東京証券取引所プライム市場に上場した。SSD需要の浮き沈みや、同業ベンダーとの合併交渉が取り沙汰される中、同社の上場はどのような影響をもたらすのか。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 NAND型フラッシュメモリやSSDを手掛けるキオクシアは、2024年12月18日に東京証券取引所プライム市場に上場した。キオクシアとしてはかねての計画をようやく果たした形だが、話は終わりではない。これで低迷していたSSD市場や、同業ベンダーとの合併話が再び脚光を浴びることになる。

ついに実現した「キオクシア上場」の余波

 東京証券取引所プライム市場に株式上場したキオクシアの初値は、公開価格1455円を下回る1440円となった。同社はこのIPOで調達する約1200億円の資金を、NAND型フラッシュメモリやSSDの需要に応えるための製造設備の増強や、コスト競争力を高めるための取り組みに投下する。

 資金は主に、キオクシアの3次元(3D)NAND型フラッシュメモリ技術「BiCS FLASH」の第8世代の増産に充てられる見通し。資金が投下されるのは、三重県の四日市工場と、岩手県の北上工場となる。第8世代のBiCS FLASHは、メモリセルを218層に積層することで従来よりも多くの容量を確保できる構造を実現している。AI(人工知能)技術を使ったアプリケーションも期待される用途の一つになる。

 NAND型フラッシュメモリの市場は過去数年にわたって低迷し、2022年半ば以降はNAND型フラッシュメモリの価格が大幅に下落したことでベンダー各社の業績が悪化した。だが先行きが悪いわけではない。調査会社Gartnerのアナリストを務めるジョセフ・アンスワース氏によると、NAND型フラッシュメモリの需要は上向きつつある。「2024年後半は好ましい状況であるため、キオクシアの上場は良いタイミングだった」とアンスワース氏は語る。

NAND型フラッシュメモリ市場への影響

 キオクシアの上場は今後どのような影響をもたらすのか。同社はNAND型フラッシュメモリやSSDの市場でSamsung ElectronicsやSK hynix、Micron Technology、Western Digitalなどど競合している。この市場に対して「キオクシアの上場がすぐに何らかの影響を及ぼすことはない」という点でアナリストの見方は一致している。

 NAND型フラッシュメモリの市場は、ストレージの需要と供給の変動や、マクロ経済の要因に左右される不安定な市場だ。その不安定さは投資家の関心を引く可能性はあっても、ユーザー企業がSSDを購入したりベンダーが販売したりする活動には影響がないと、調査会社Objective Analysisのゼネラルディレクターで半導体アナリストであるジム・ハンディ氏はみる。「買い手の視点から見れば、大きな変化はない」(ハンディ氏)

 一方で調査会社NAND Researchの創設者でアナリストのスティーブ・マクドウェル氏は、市場における即時的な変化はなくても、キオクシアの市場戦略には影響を与える可能性があると指摘する。「上場した後は、製品を市場に投入するサイクルに関して従来以上に積極的になる必要がある」(マクドウェル氏)

 企業が株式非公開ではなくなり、投資家に対して成長への可能性をより強く示さなければならなくなれば、以前に増して競争力を向上させる取り組みに注力することが求められる。上場すると、キオクシアであればMicron Technologyのような競合ベンダーと比較される機会が増えるはずだ。

合併交渉

 過去数年、キオクシアとWestern Digitalが合併するという報道が繰り返されている。2023年にも両社は合併に向けた可能性を探っていたようだが、2023年10月に両社の交渉は決裂したことが明らかになった。ただしWestern DigitalがフラッシュメモリおよびSSDの事業と、HDDの事業を2つに分割する方針を発表したことを受けて、両社が合併するのではないかという憶測はまだ消えていない。

 そもそもキオクシアとWestern Digitalの合併交渉が浮上する背景には、両社が北上工場と四日市工場を共同で運営していることがある。この協力関係が続く限り、合併のうわさは消えないとアンスワース氏はみている。

 市場が低迷しているときには、合併や買収のうわさが出やすいものだ。NAND型フラッシュメモリの市場も、過去2年ほどはまさにそうした状況にあった。とはいえ「両社の間で何かが起こる可能性はあるが、IPOは事業分割とは別の話だ」と、調査会社IDCのアナリストであるジェフ・ジャヌコウィッツ氏は指摘する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る