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「スマートフォン禁止」が学校にもたらした“驚きの改善効果”とは?スマホ禁止に踏み切る学校【中編】

健全な学校づくりを目指し、学校がスマートフォンの全面禁止に踏み切り出した。従来の「かばんにしまう」程度のルールでは効果が見られなかった現場で、どのような変化が起きたのか。英国での取り組み例と施策を紹介する。

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 スマートフォンとSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が子どもに与える悪影響を懸念する声が、保護者と教職員の両方から上がっている。そうした中で英国は、国を挙げて子どものスマートフォンやインターネット利用の規制に乗り出しており、2023年10月にはOSA(Online Safety Act 2023:オンライン安全法)が成立した。

 イングランドにあるJohn Wallis Academyの校長ダミアン・マクビース氏は、以前は「スマートフォンの電源をオフにしてかばんの中に入れる」というルールを採用していたが、効果がなかったという。その後、同校はスマートフォン利用禁止のルールを導入し、“顕著な改善”を確認できた。どのような効果を得られたのか。

スマートフォン禁止に踏み切った学校での“驚きの効果”とは?

 校長として25年間務めた経験を持つマクビース氏は、スマートフォンが「問題と混乱の大波」を引き起こしていると指摘する。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)以降、以前は容認されていた行動が減少している。この変化が若者の行動に影響を及ぼし、SNSでのトレンドに影響を受けたり、トイレの個室に集まったり、インターネットで危険な人物と出会ったりといった行為の増加が、子どもの注意を散慢にしている」と同氏は語る。

 子どものスマートフォン使用の制限を提唱する活動団体「Smartphone Free Childhood」(SFC)は2024年10月、子どもがスマートフォンのない環境で学ぶことを推進するキャンペーン「Smartphone Free Schools」を開始した。

 SFCによると、マクビース氏の懸念は他の教職員にも共通しており、指導や支援を求める声が同団体に集まっている。「授業中に気が散る問題やネットいじめ、不適切なコンテンツの共有など、スマートフォンの影響に悩む教職員からの報告が殺到している。これは政府からの即時の支援が必要な緊急事態だ」。SFCの共同創設者であるクレア・ファーニホー氏はそう述べる。

 Smartphone Free Schoolsのスクールエンゲージメントリードであるウィル・オアユーイング氏は次のように語る。「子どもは登校日に数百件の通知を受け取り、常に注意が散漫になっている。特に教職員の目が届かないトイレや休み時間には、スマートフォンを確認している」

 SFCは、学校で過ごす全時間で子どもからスマートフォンを取り上げる方法を考案するよう推奨している。具体的には、ポーチとロッカーの利用やスマートフォンの持ち込みを完全に禁止する措置、移動時に代替として子ども向けスマートフォンを利用するといった施策だ。

 スマートフォン禁止後、John Wallis Academyでは子どもと教職員に以下の顕著な改善が見られた。

  • 居残りが40%減少
  • 無断欠席が80%減少
  • 教職員の離職率が30%から17%に減少

 運動家や教職員は、政府からのさらなる支援が全国的な変革を促す可能性があると考えている。2023年12月、シンクタンクPolicy Exchangeは英国全土の800校を対象とした調査を実施した。その結果によれば、効果的なスマートフォン規制を実施している学校はわずか11%だった。2024年10月にSFCは教育省へ公開書簡を送り、校長や学校理事会、地方自治体からスマートフォン禁止を目指す学校への資金支援を要請した。


 次回は、さらなるオンライン規制法の可能性を取り上げる。

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