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レガシーアプリの「クラウド移行」は正解なのか? そのメリットと落とし穴クラウド移行ガイド【前編】

レガシーアプリケーションのモダナイゼーションはさまざまな企業が抱える悩みだ。方法の一つとして、クラウドサービスへの移行を進めてモダナイゼーションを推進するというアプローチがある。

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 システムのスケーラビリティ(拡張性)やセキュリティ、コスト効率の向上を求める企業にとって、レガシーアプリケーションのモダナイゼーション(最新化)は避けられない課題だ。モダナイゼーションの手法として、アプリケーションのインフラをクラウド移行するアプローチが一つの選択肢になる。レガシーアプリケーションのクラウド移行には、どのようなメリットと課題があるのか。

クラウド移行のメリットと課題

 企業の重要な業務プロセスを支えているレガシーアプリケーションの大半は、老朽化が進むインフラで運用され、そのインフラの保守コストは高騰している。アプリケーションのインフラは老朽化するにつれて技術的負債(将来の維持管理に支障を来す問題)が蓄積し、運用コストの上昇やパフォーマンスの低下、セキュリティの懸念増大などにつながる。

 これに対して、アプリケーションのインフラをクラウドサービスに移行することで、ビジネスに必要な新機能の追加や運用効率の改善といったメリットを享受し、モダナイゼーションに成功する企業は珍しくない。

 クラウドサービスに移行することで、次のメリットを得られる可能性がある。

  • コストの削減
    • 一般的にクラウドサービスは従量制課金モデルであり、ハードウェアの初期投資費用を抑えられる可能性がある。
    • 必要なリソースを必要な時にだけ利用して、過剰な投資を防ぐことが可能になる。
  • スケーラビリティの獲得
    • 需要に合わせてコンピューティングリソースをスケールアップ、スケールダウンできる。
  • セキュリティの強化
    • クラウドサービスベンダーがインフラのセキュリティ対策に投資している他、OSの脆弱(ぜいじゃく)性に対するパッチ(修正プログラム)はベンダーが自動的に適用するサービスもある。
  • 運用効率の向上
    • パッチ適用やバックアップなどの日常の管理作業を、クラウドサービスの機能やベンダーのサービスによって自動化することで、運用効率が向上する可能性がある。
  • 働き方の多様化
    • インターネットに接続できる環境であれば、従業員はいつでもどこからでもアプリケーションにアクセスできるため、テレワークがしやすくなる。
  • 統合の強化
    • 新しいツールやサービスの導入や、サービス連携が容易になる。

 時間が経過してクラウドサービスの習熟度が高まるほど、これらの恩恵を受けられるようになる。企業によっては、クラウドサービスによって市場の変化により迅速に追随できるようになると感じることがある。

移行のトレードオフについて

 しかし、アプリケーションをクラウド移行する前に、企業はさまざまな要素を慎重に評価する必要がある。レガシーアプリケーションのクラウド移行を決めることは、日常業務からIT戦略に至るまで、あらゆる要素に影響が及ぶからだ。

 ほぼ全てのレガシーアプリケーションは、クラウドサービスで運用することを前提にした設計にはなっていない。レガシーアプリケーションはコンポーネント同士が密結合となっていたり、高速なローカルネットワークを利用できる前提だったり、セキュリティ対策の考え方が時代遅れだったりする。こうしたアーキテクチャの不整合を理解しておくことで、クラウド移行時に待ち受ける課題に適切に備えることができる。

 課題は技術的側面だけではない。レガシーアプリケーションが企業の重要な業務プロセスを支えているのであれば、担当者はクラウド移行時には業務の継続性を確保すべきだ。クラウド移行によって生じる混乱とメリットのバランスを考慮する必要がある。

重要なのは課題への対処

 クラウド移行時に注意すべき重要な課題は以下の通りだ。

  • コスト
    • ITインフラの調整やスタッフのトレーニングといったクラウド移行の初期コストが高額になる可能性がある。
  • 互換性
    • レガシーアプリケーションをクラウドサービスで効率的に運用するには、アプリケーションの変更やカスタム修正が必要になる場合がある。
  • ダウンタイムと中断
    • クラウド移行によって一時的にサービスが中断し、ビジネスの継続に影響する場合がある。
  • セキュリティとコンプライアンス(法令順守)のリスク
    • データをクラウド移行する場合、コンプライアンスを重視して規制に準拠し、データのセキュリティを確保するための入念な計画が必要になる。
  • 管理の複雑性
    • クラウドサービスとオンプレミスインフラのハイブリッドインフラを管理することになると、運用が複雑になる可能性がある。
  • データ転送の制約
    • 膨大なデータを移動するために、膨大な時間とコストが必要になる可能性がある。

 こうした課題を事前に把握しておくことで、クラウド移行プロジェクトの現実的なスケジュールの策定やリソースの割り当てが容易になる。企業は段階的にクラウド移行を進めることで、社内で専門技術を習熟した人材を育成しながらリスクを管理できる可能性がある。

 レガシーアプリケーションを移行するには、秩序だった計画を立て、緻密に実行していく必要がある。


 次回は具体的なクラウド移行のステップを説明する。

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