メモリが小さくてもパフォーマンスが落ちない「仮想メモリ」の謎:物理メモリと仮想メモリの違い【中編】
仮想メモリとは、現代の効率的なコンピューティングの基礎を成す技術の一つだ。メモリが不足してもパフォーマンスが落ちないその仕組みとは、どのようなものなのか。
コンピュータが搭載するメモリには、両立し難い2つの問題が付いて回る。1つ目はコスト。2つ目はシステムの動作速度(パフォーマンス)だ。一方を優先すれば、もう一方を犠牲にせざるを得なくなる。「仮想メモリ」とは、この問題を解消するための仕組みなのだが、どうすればメモリが不足しているのにパフォーマンスの劣化が起きずに済むのか。その仕組みを解説する。
なぜメモリ不足でもパフォーマンスが落ちないのか
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連載:物理メモリと仮想メモリの違い
メモリの基礎知識
容量のより小さなメモリを選択すれば、コストを抑えることはできる。だが通常は、それではコンピュータの動作が遅くなるといったパフォーマンスの劣化を招く。この問題を解消するために生まれたのが、アプリケーションのプログラムに「実際よりも大きなメモリ容量がある」と思い込ませる仕組みだ。
1960年代、コンピュータ設計者たちがコンピュータの処理を高速化するためのさまざまな試みを実施する中、一部のコンピュータ設計者は、プログラムからは見えないストレージとメモリを連動させる仕組みを採用して処理の高速化を図った。
仮想メモリにおいては、プログラムが1つのメモリアドレス空間(メモリアドレスによってアクセスできるメモリ領域)にアクセスすると、そのアドレス空間にあるべきデータがストレージからメモリにコピーされる。そのデータは、不要になるまでメモリにとどまる。不要になったデータは再びストレージに戻されることによって、メモリに空き容量が生まれる。
メモリとストレージが連動して動作するのを成り立たせているのが、仮想メモリと呼ばれる仕組みだ。仮想メモリは、「ストレージと同じ大きさのメモリがある」とプログラムに思い込ませるようにする。
仮想メモリと呼ばれるのは、ストレージや物理メモリを「利用可能な実際のメモリアドレス空間」だと仮想的に見なすからだ。仮想メモリという言葉ができたことで、それとは区別するために物理メモリという名称が普及した。
次回は、CPUがなぜメモリの容量を「ストレージほどに大きい」と思い込むのかを解説する。
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