メタバース時代の「ブロードバンド」とは? 通信インフラの進化を予測:業界団体が調査
業界団体のWBBAが公開したレポートは、メタバースやXR(Extended Reality)アプリケーションに必要な通信インフラについて解説している。メタバースに求められるブロードバンドとは。
通信事業者による業界団体の世界ブロードバンド協会(World Broadband Association:WBBA)は世界各国の通信事業者に向けて、光ファイバーベースの通信インフラへの投資、法整備、配備の計画を進めるよう勧告している。
WBBAは2024年9月、仮想空間「メタバース」とネットワークに関するレポートを公開した。同レポートではメタバースに加えて、「AR」(拡張現実)、「MR」(複合現実)といった「XR」(Extended Reality)のアプリケーションに求められるネットワークインフラについても解説している。メタバースやXRを利用するためにはどのようなネットワークが必要なのか。
メタバースやXRに必要な帯域幅は?
WBBAは、ブロードバンドネットワークおよびサービス提供の推進を支援することを目標としている。同団体は2024年に、メタバースの業界団体Metaverse Standards Forum(MSF)と共同で作成した「The Impact on Broadband Networks of Deploying Metaverse Applications at Scale」(メタバースアプリケーションの大規模展開がブロードバンドネットワークに及ぼす影響)というレポートを発表した。
MSFとWBBAによれば、標準的なXRアプリケーションを利用するためには現状、6M〜35Mbps程度の帯域幅と、遅延で60ミリ秒未満の性能が必要だ。ただし、今後はメタバースやXRのアプリケーションがより複雑なものになる一方で、XR用のハードウェアは小型化が進み処理能力が低下する可能性がある。その場合、ネットワークの性能はさらに求められる。2027年には35M〜120Mbpsの帯域幅と、30ミリ秒未満の遅延が求められるようになる、と同レポートは説明している。
The Impact on Broadband Networks of Deploying Metaverse Applications at Scaleでは、メタバースとXR(Extended Reality)のアプリケーションを十分に利用できるネットワークを実現するために、以下の内容を推奨している。
- 光ファイバーの標準規格「PON」(Passive Optical Network)に基づいたネットワークの大容量化
- 無線LAN規格「IEEE 802.11be」(Wi-Fi Allianceの認証規格では「Wi-Fi 7」)への移行
- 通信事業者が運用する基幹ネットワークにおける400Gbps、800Gbpsのイーサネット規格の導入
メタバースやXRアプリケーションを利用するためにはこのようなネットワークの進化が必要だ。だが、WBBAの予測では2030年時点で、一部の地域で光ファイバーによるブロードバンドサービスの普及率は全加入者の40%未満にとどまる。25Gbpsまたは50Gbpsを実現するPONに準拠した「OLT」(光加入者線終端装置)を導入する通信事業者も限られたままだ。WBBAはこうした状況を改善するための方法についても提案している。
「メタバースやXRなどの概念が注目を集めるようになり、開発途上国においてもこれらの技術がもたらす社会経済的利益を享受する機会が必要だ」とWBBA理事長のマーティン・クリーナー氏は述べている。WBBAのレポートではメタバースやXRのアプリケーションを提供するために必要なネットワーク要件を示している。
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