一度は消えたJavaScript代替言語「Dart」に今こそ学ぶ価値があるのはなぜ？：見直すべきDartの価値【中編】
かつて「JavaScript代替」として注目されながらも一時は廃れた言語と見なされた「Dart」。だが今、この言語が再び注目を集めている。開発者が“Dartを学ぶ価値がある”と感じるであろう同言語の強みとは。
「Dart」は、Googleが2011年に発表したプログラミング言語だ。登場当初は、Webアプリケーション開発に広く使われている「JavaScript」の代替を目指す野心的な言語として登場したものの、その後大きな広がりを見せることはなかった。
だがGoogleのオープンソースのUI（ユーザーインタフェース）フレームワーク「Flutter」の台頭などの要因もあり、Dartを再評価する動きが開発者の間で広がっている。モバイルアプリケーションを含めてクロスプラットフォームの開発を巡る変化が、再びDartに脚光を当てているのだ。
Dartが再浮上してきた背景を説明した前編「“JavaScript代替”としては忘れられた『Dart』が再浮上してきた理由」に続き、本稿は開発者が「自身のスキルセットにDartを加える価値がある」と感じられるであろう、言語としての強みを紹介する。
なぜDartは今「学ぶ価値がある」と言えるのか？
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開発者に愛される言語は
1．Dartはオブジェクト指向プログラミングを基本とする
Dartは、アプリケーションの全ての構成要素を「オブジェクト」として扱うよう設計されたオブジェクト指向プログラミング言語だ。クラスベース（「クラス」を使ってオブジェクトを設計する形式）の単一継承（1つのクラスだけを親クラスとして継承））を採用し、「Swift」や「Objective-C」といった他のオブジェクト指向言語に似た構文を持つ。
オブジェクト指向におけるインタフェースとは、特定の機能や振る舞いを持つことをクラスに約束させる仕組みだ。アプリケーションの一部または全体を再利用可能なオブジェクトとして定義する際に用いられる。これにより、複雑なコーディングプロジェクトを効率的に構築できるだけでなく、アプリケーション内の機能を明確に分離しやすくなる。
設計したオブジェクトと、それを支えるインタフェースは、ソフトウェアアーキテクチャにおいて「抽象化」を導入する上で欠かせない存在となる。抽象化とは、オブジェクトやシステムの本質的な機能だけを切り出し、扱いやすくする設計手法で、複雑な構造を分かりやすく整理するのに役立つ。
Dartでは加えて、多重継承の仕組みにより、1つのオブジェクトが複数の親オブジェクトから性質や機能を受け継ぐこともできる。
2．Dartコンパイラは高速で信頼性が高い
Dartは静的型付けを採用しており、変数や関数のデータ型が一度定義されると、実行時に勝手に変わることがないように制御されている。この仕組みにより、コンパイラはソースコードの内容をあらかじめ検査し、実行前にエラーを検出して開発者に警告できる。
Dartには、「The Dart development compiler」（dartdevc）というツールが用意されている。dartdevcはDartのコマンドラインツール「webdev」と組み合わせて使用することで、ソースコードのビルド（ソースコードを実行可能形式に変換）やデバッグ用に専用の開発サーバを立ち上げることができる。
加えて、Dartは事前コンパイルに対応しており、ソースコードをあらかじめコンピュータが理解できる形に変換する。これにより、アプリケーションはネイティブバイナリファイルとして直接実行可能となり、起動や動作の高速化が期待できる。
さらに、Dartは「アイソレート」と呼ばれる仕組みを用いて、並列処理を安全に実行できる。アイソレートはそれぞれが独立したメモリ領域を持つため、複数の処理を同時に実行してもお互いに干渉することがない。このように、Dartは高い信頼性を備えた並列処理の環境も提供している。
次回は、Dartの学ぶ価値として3〜4つ目のポイントを紹介する。
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