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バックアップデータの保管場所はやはり「自社」がいい? 利点と欠点を整理「オンサイトバックアップ」の要点【前編】

バックアップデータをクラウドサービスではなく、自社インフラに保管する「オンサイトバックアップ」の採用が広がりつつある。そのメリットとデメリットを見てみよう。

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 クラウドサービスを利用し、データの発生場所から離れた遠隔地にバックアップデータを保管することを「オフサイトバックアップ」と呼ぶ。オフサイトバックアップはクラウドサービスの拡大とともに広がってきた。そうした流れだけではなく、近年は企業が所有するインフラを利用してバックアップデータを「オンサイト」(オンプレミスシステム)に保管する手法も見直されつつある。以下ではオンサイトバックアップのメリットとデメリット、どのような企業に適しているかを解説する。

オンサイトバックアップの利点

 オンサイトバックアップは企業に以下のメリットをもたらす。

メリット1.強固なセキュリティ

 オンサイトバックアップでは、ユーザー企業がデータ、インフラ、セキュリティ対策を自社で一元的に管理できる。バックアップストレージへのアクセスを厳密に制御すれば、インターネット経由の脅威にさらされる可能性があるクラウドサービスと比べ、バックアップデータの流出リスクを抑えることができる。

メリット2.コンプライアンス(法令順守)の確保

 データを「外部に出さない」ことから、オンサイトバックアップは医療機関や金融機関など、セキュリティ要件が厳しい分野の企業に最適だ。

メリット3.迅速なデータ復旧

 オンサイトバックアップでは、データをインターネットではなく、社内LANで転送するので、クラウドサービスと比べて復旧速度が速くなる。特に大容量ファイルやシステム全体をバックアップする際、このメリットは大きい。

メリット4.インターネット接続への非依存

 オンサイトバックアップは、システムの運用にインターネット接続を必要としない。そのため、インターネット接続が不安定だったり制限されたりする場所でも、データのバックアップや復旧が可能だ。

メリット5.費用削減

 クラウドサービス(オフサイトバックアップ)の利点の一つは、ハードウェア購入の費用が発生しないことだ。しかし長期的にみれば、オンサイトバックアップのハードウェアコストはクラウドサービスの利用料より低くなる可能性がある。特に、大量のデータを持つ企業では顕著だ。

メリット6.カスタマイズしやすさ

 大半のオンサイトバックアップツールは、企業のニーズに合わせてカスタマイズができる。カスタマイズできるのは、ストレージの種類やバックアップスケジュール、データ保持ポリシー、暗号化方法などだ。

デメリット

 一方で、オンサイトバックアップには幾つかの欠点もある。

デメリット1.高額な初期投資

 オンサイトバックアップ専用のハードウェアやソフトウェアの購入と設置には費用がかかる。電力や冷却、サーバルームのラックなどの物理的スペースを確保するための費用も生じる。

デメリット2.物理的な脆弱(ぜいじゃく)性

 オンサイトバックアップは火災や盗難、洪水、ハードウェア故障のリスクにさらされる。特に、バックアップ用データが元データと同じ建物に保管されている場合、災害時に両方のデータが損失する恐れがある。

デメリット3.拡張性の限界

 データの増加に伴ってストレージ容量を増やすことになれば、その分のハードウェアを設置するための物理的なスペースも増やす必要がある。これには時間と費用がかかり、クラウドサービスのように手軽に拡張することは難しい。

デメリット4.担当者による現地での管理

 クラウドサービスとは異なり、オンサイトにおけるデータバックアップやインフラの管理には、そのための専門知識を持つIT管理者を現地に配置する必要がある。

どの規模の企業に最適なのか

 オンサイトバックアップの導入効果は、企業の規模や業種、担当者のITスキルによって大きく異なる。

 地域のパン屋や法律事務所、デザインスタジオといった小規模企業(従業員数1〜50人)はオンサイトバックアップの実施に当たり、外付けHDDやネットワーク接続ストレージ(NAS)を使用することが一般的だ。盗難や火災などのリスクはあるが、低い運用費と管理しやすさを中心としたメリットの方が大きい場合がほとんどだ。

 教育機関を含む中規模企業(従業員数50〜500人)がオンサイトバックアップを実施する場合は、ラックマウント型のバックアップサーバやSAN(ストレージエリアネットワーク)、それらの管理用ソフトウェアを導入する必要がある。サーバルームを用意し、UPS(無停電電源装置)や空調設備も備えなければならない。これらの導入費や運用費とシステム運用の複雑さがデメリットだが、オフサイトバックアップよりも詳細な制御と迅速な復旧が可能になる。

 大企業(従業員数500人以上)は、専用のバックアップサーバや複数のSAN、長期保存用のテープライブラリなどに加え、それらのための高度な管理ツールと仕組みが必要になる。当然、運用費が高くなったり、専門知識を持つ担当者が必要になったりするが、厳しいコンプライアンス要件を満たすことができる。


 後編は、オフサイドとオンサイドを組み合わせたハイブリッドなバックアップ方法を紹介する。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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