「Wi-Fi 8」実用化始動 “不安定な無線”は過去のものに?:Broadcomが半導体部品を初公開
ビデオ会議が途切れる、複数の機器接続で通信が不安定になるといった課題の解決策として、次世代規格「IEEE 802.11bn」(Wi-Fi 8)が本格始動した。実用化を目指し、Broadcomなど複数のベンダーが動き出している。
オフィスでの無線通信の不安定さは、企業にとって共通の悩みだ。ビデオ会議中に音声が途切れたり、従業員が同時に容量の大きなファイルをダウンロードすると通信が遅延したりする。こうした課題を根本的に解決し、通信速度を向上させるために、「超高信頼」(Ultra High Reliability)を実現するという設計思想に基づき、米国電気電子学会(IEEE)は無線LAN規格「IEEE 802.11bn」(Wi-Fi 8)を提唱した。
IEEE 802.11bnは、AI(人工知能)技術活用が本格化する時代に不可欠な信頼性を備えた通信技術として、通信機器ベンダー各社が実用化に取り組んでいる。そうした中、IEEE 802.11bn準拠の通信を実現するために変革の口火を切ったのが、半導体大手のBroadcomだ。同社は2025年10月、IEEE 802.11bn準拠の通信機能を制御する半導体部品を、「業界で初めて発表した」と公表した。
「接続成功」「実機開発」を実現したベンダーとは
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Broadcomが開発した半導体部品は、ルーターやスマートフォン内でIEEE 802.11bnの通信ルールを実行するプロセッサだ。この半導体部品の特徴は、AI(人工知能)技術を活用して通信を自動で最適化する機能が組み込まれている点だ。これによってネットワークの混雑状況や電波の状態をリアルタイムで収集分析し、常に最適な接続を維持するという。「AI技術の活用が進む中で、企業や消費者はネットワークが高速であるだけではなく、自律的で、適応力があり、信頼できるものであることを求めている」と同社は説明し、その価値を強調する。
この半導体部品の登場に合わせて、ネットワーク業界は動き出している。TP-LinkとSercommは、IEEE 802.11bn準拠の通信および通信機器の実用化に向けて、それぞれの成果を発表した。家庭用通信機器ベンダーのTP-Linkは、試作機を用いたIEEE 802.11bn準拠通信によるデータ送受信テストに成功したことを公開。通信事業者向け機器を製造するSercommは、Broadcomの部品を搭載した物理的な通信機器を業界イベントで公開し、技術が実用化段階に入ったことを示した。
続いて、通信事業者向けの機器を製造するSercommは、Broadcomの半導体部品を搭載した、世界初となる物理的な通信機器を公開した。同社の担当者は、「IEEE 802.11bnは、事業者が単なる通信速度ではなく、顧客体験の質で差別化するための戦略的な要素だ」と語り、安定した接続品質こそが市場での優位性につながるという認識を示している。
これら一連の動きは、半導体メーカーから最終製品メーカーまで、業界全体が協調し、スマートホームやIoT(モノのインターネット)デバイスが爆発的に普及する社会の通信技術を構築し始めたことを表している。IEEEは、IEEE 802.11bnの技術規格を正式に承認するのは2028年ごろと見込んでいる。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。