採用管理システム(ATS)は何ができ、何ができないのか 使いこなすための注意点:採用活動の自動化を成功させるには
ATSは企業の採用プロセスに必要なデータを一元管理し、単純なタスクを自動化できる。採用担当者と応募者の双方にメリットをもたらすが、利用時には注意点もある。ATSの主な機能と、導入する際のポイントを説明する。
採用管理システム(ATS:Applicant Tracking System)は、企業が採用プロセスを効率化するのに役立つ。このプロセスには、採用チームが求人情報の内容を改善することや、候補者の情報を整理、評価し、採用過程を通じて各応募者を追跡することなどが含まれる。
ATSは採用チーム全体にとって重要なツールとなるが、人事リーダーはATSのデメリットも考慮すべきだ。ATSの採用は応募者と採用担当者の対面での接触機会が失われてしまうリスクや、導入に時間がかかる可能性がある点などが挙げられる。ATSを利用するメリットとデメリットを解説する。
ATSを使用する利点とは 採用担当者と応募者に何をもたらすのか
ATSは採用担当者にさまざまな利益をもたらし、その利益は応募者にも広がる。
1.採用プロセスの効率化
採用プロセスには、求人の作成から面接のスケジュール調整まで、さまざまなステップが含まれる。ATSは採用プロセスを一つのツールで自動化し、応募者や採用活動に関連するデータを一元管理する。そのため採用担当者は手作業のタスクを減らすことができる。ATSの主な機能は以下の通りだ。
- キーワードフィルター
- スキルや学歴、経験などエントリーシートに記載された要件に基づいて、候補者をスクリーニングする。
- AI(人工知能)/ML(機械学習)アルゴリズム
- AI/MLアルゴリズムで応募者を分析、分類し、職務への適合度合いに基づいて応募者をランク付けすることで、適格な応募者を特定したり、他の空きポジションとマッチングしたりする。
- トラッキングアラート
- 選考プロセスが一定の期間以上停滞している場合に、採用チームに通知する。
- フィードバックワークフロー
- 採用担当者が求職者と面接した際のメモや評価、その他のデータを一箇所に保存できる。
- 面接スケジューラー
- 応募者に招待状を送信したり、面接時間の調整作業を自動化したりする。
- ワンクリック投稿
- ワンクリックで求人情報を複数の求人サイトや掲示板に投稿する。
- リマインダー送信
- 応募者に面接時間の確認やアンケートへの回答を促すリマインダーを送信する。
- メッセージングシステム
- 選考に必要な情報や、応募者と採用担当者間のコミュニケーションを促すメールを自動送信する。
- NLP(自然言語処理)
- 求人情報に記載された内容から、応募者を応募から遠ざける可能性のある表現を特定し、修正できるようにする。
- チャットbot
- 会話形式で応募者の質問に答えたり、エントリーシートへの記入を支援したりする。
- 分析
- 採用活動のトレンドや採用活動の効果を評価し、改善につなげる。
- コンプライアンス機能
- 採用活動で収集した応募者のデータを、労務や個人情報保護に関連する法規制にのっとって管理する。
2.応募者の体験の向上
応募者にとって仕事探しはストレスが大きく、時間がかかる作業になる。ATSは、各候補者から収集するデータを利用して、選考にかかる時間を短縮する。応募者のデータをオンボーディングのために保存することで、採用担当者と応募者、入社者の時間と労力を節約する。
3.応募者に再提案が可能なデータベースの構築
ATSは大量のデータを収集し、候補者情報を含む貴重なデータベースを形成できる。大抵のATSは情報検索機能を搭載している。企業が新たに求人するときに、過去の応募者の中から、当時の人材の要件には適合しなかったが、現在求めている要件に合致している応募者を見つけられる。
ATSのデメリット
ATSは幾つかのデメリットがあり、リクルーターはこれらを考慮する必要がある。
1.応募者を不適切な理由で拒否する可能性
ATSの設定によっては、特定のキーワードに一致しない応募者を排除することがある。しかしその応募者が自社で発揮できる他の適性を持っている場合がある。
全ての人事リーダーは、採用ソフトウェアに潜むバイアスの可能性を認識しておくべきだ。米国の雇用機会均等委員会(EEOC)は2023年、採用にAI技術を用いることで生じる差別について、HRソフトウェアベンダーやそのユーザー企業に対策を求めた。
2.個別の接触が不足するリスク
ATSは応募者とのコミュニケーションを自動化できるが、そのコミュニケーションを“血が通ったもの”として感じられない場合がある。これは応募者にストレスを与える可能性がある。
採用担当者はチャットbotや自動メッセージに頼るのではなく、応募者が通常不安を抱きがちな選考プロセスの中でストレスを感じさせないよう、個別のメッセージを送ることを忘れてはならない。
3.導入に時間がかかる
ATSは企業にさまざまなメリットをもたらすが、新しいシステムの導入は詳細な計画なしでは困難だ。人事リーダーは、社内の他のメンバーと協力して適切なATSを選び、必要なコストを考慮した導入計画を立てる必要がある。
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