マネックス証券が「止められない」基幹DBをクラウド化 40%費用削減の勝算とは:オンプレミス増強と比較して判明したメリット
システム停止が許されない条件の下、金融機関はオンプレミスシステムでの過剰な計算資源確保を余儀なくされてきた。この常識に対し、マネックス証券は基幹DBをクラウド移行し、可用性と費用削減の両立を図っている。
突発的なアクセス集中に備えてサーバを増強すれば平常時の稼働率は下がり、維持費用が経営を圧迫する。かといって費用を抑えるためにインフラを制限すれば、機会損失やシステムダウンのリスクにおびえることになる――。これはWebサービスを運用するIT部門が抱える「キャパシティープランニング」のジレンマだ。
相場変動によって負荷が大きく変動するオンライン証券サービスにおいて、この課題は特に深刻だ。1999年の創業以来、オンライン証券の先駆者として成長を続けるマネックス証券においても同様で、同社は利用者層の拡大に伴い、システム負荷の増大が課題となっていた。
この課題を解消する手段として、マネックス証券はクラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)を採用。証券基幹システムのデータベースを、クラウドデータベース「Oracle Exadata Database Service」に移行する決断を下した。大手オンライン証券が基幹データベースをOCIに移行するのは国内初の事例だと日本オラクルは説明する。オンプレミスシステムを増強し続けた場合と比較して、約40%の費用削減効果を見込んでいるという。
金融機関にとって「止まらない」ことが絶対条件の基幹システムにおいて、なぜマネックス証券はあえてクラウド移行を選択したのか。マネックス証券が採用した「ハイブリッド構成」の全容と、移行の決め手となったポイント、費用削減のロジックを解説する。
性能と可用性を両立させる「ハイブリッド構成」
証券取引において、システム遅延は致命的なリスクになる。マネックス証券は、今回の移行に当たって「性能の維持」と「高可用性の確保」を最優先事項に据えた。
選定の決め手となったのは、オンプレミスシステムで実績のあるデータベースアプライアンス「Oracle Exadata」の能力を、クラウドサービスでもそのまま活用できる点だ。複数のサーバで1つのデータベースを共有し、不測の事態でも停止を防ぐ仕組み「Oracle Real Application Clusters」(Oracle RAC)を継承。これによって、金融機関に求められる厳しい可用性基準を満たした。
導入に際しては、クラウドサービス特有の懸念事項であるネットワークの通信遅延(レイテンシ)を入念に検証。実証実験(PoC)を通じて、オンプレミスシステムと同等の処理性能が発揮できることを確認した。その結果、一部の重い処理をクラウドへ逃がしつつ、既存のオンプレミス構成と安全に連携させる「ハイブリッド構成」を確立した。既存システムを有効活用しながら、将来の拡張に備えた最適な構成を整えた形だ。
需要連動型スケーリングによるコストの最適化
従来のオンプレミスシステムでは、年に数回発生するかどうかという最大負荷を想定し、常に余剰な処理能力を保持しなければならなかった。これはIT予算を押し上げる要因になっていた。
新システムでは、取引量の増減や市場の価格変動に合わせ、処理性能を自由に変更できるスケーリング機能を活用している。必要なときに必要な分だけ計算能力を割り当てる「適応力のあるインフラ」を実現したことで、サーバ運用費や保守費を大幅に圧縮。マネックス証券は、今回のシステム刷新によって、オンプレミスシステムを増強した場合と比較して約40%の費用を削減できると試算している。余剰となったシステムや予算を、顧客体験の向上や新規サービス開発に投資できる好循環を生み出す狙いだ。
内製化による迅速な移行とモダナイゼーション
今回のプロジェクトにおける特筆事項は、主要な工程をマネックス証券の内製体制で推進したことにある。外部ベンダーに過度に依存せず、自社のエンジニアが主体となってクラウド移行を完遂した。これにより、意思決定の迅速化とノウハウの蓄積を同時に実現した。
マネックス証券のシステム管理部長である中村拓也氏は今回の取り組みについて、ビジネス成長と取引量増加に耐え得る「堅牢(けんろう)で拡張可能なシステム」の必要性を強調する。OCIの採用によって、処理の最適化と性能強化に加え、高いセキュリティ基準の維持が可能になったという。この移行は単なるシステムの場所替えではなく、事業拡大に適合するための「基幹システムの近代化(モダナイゼーション)」の一環だ。
将来の展望:データ保護の極大化と生成AIの本格活用
今後のロードマップとしてマネックス証券は、さらなるレジリエンス(回復力)の向上を掲げている。具体的には、データベース専用のフルマネージド型データ保護ツール「Oracle Database Zero Data Loss Autonomous Recovery Service」の導入を検討中だ。これによって、万が一障害が発生した際にもデータ損失を極限まで抑える体制を構築する。
蓄積された膨大なデータの活用においても一歩先を見据える。AI(人工知能)技術搭載の自立型データベース「Oracle Autonomous AI Database」が提供する、自然言語でデータベースに問い合わせできる機能「Select AI」の活用など、データ分析に関する取り組みも検討事項に含まれている。AIツールを業務に組み込むことで、データ分析のスピードを劇的に高め、より精度の高い投資情報の提供や顧客応対の自動化など、オンライン証券サービスの進化を加速させる構えだ。
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