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どこでも通用するはずの情シス管理職が“詰む瞬間” 前もってしておくことは? “評価されなくなる瞬間”とは?

技術とマネジメント両方の経験や知見を持ち、転職市場で引く手あまたのはずの情シスプレイングマネジャーが直面する壁がある。情シス人材のキャリア構築に知見を持つ向井達也氏が、その実態を紹介する。

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ERP |人事 | スキル


著者: 向井 達也

ネクスプロイド株式会社 転職アドバイザー

IT人材領域でおよそ12年にわたりキャリア支援に携わる。2020年8月以降は、「ベンチャー × コーポレート × IT」を専門領域とし、特に情シス人材の支援に注力している。現場の情シスとのネットワークを強みとし、Xでは情シス関連のフォロワーが1500人超。ベンチャー情シスの実情や変化を、日々発信している。

 「現場も分かるし、マネジメントもしている。情シスとしては、それなりにやれているはずだ」――。そう感じながら日々の業務に追われているプレイングマネジャーは、少なくないのではないでしょうか。トラブル対応、調整、改善提案、メンバーのフォロー。手を動かしながら組織も回す――情シスでは当たり前の働き方です。

 一方、ふと立ち止まったときに、こんな違和感を覚えることはないでしょうか。「これだけ忙しいのに、評価は本当に上がっているのか」

 技術も分かり、現場感もあり、マネジメントもしている。この状態は、一見すると市場価値が高そうに見えます。しかし、その経験やスキルは本当に“どの企業でも通用する形”になっているのでしょうか。転職や次の役割を考えたとき、そこで初めて見えてくる落とし穴も存在します。

 本稿は、情シス人材のキャリア構築に知見を持つ向井達也氏に、技術も現場も分かる情シスプレイングマネジャーが“詰む瞬間”と対策について聞きました。

情シスプレイングマネジャーが“詰む瞬間”とは?

 情シス人材にとって、「キャリア」と「マネジメント」は切っても切り離せない話です。特に、マネジメントをしながら最新の技術を追っておられる方や、現場に近い目線を持って日々業務を遂行されている方は、転職市場でも引く手あまたではないか――と考えておられる方が多い印象です。ですが、気にしておくべき点もあります。

ケース1.情シスの経験を「同じ形」で再現できない

 企業規模、IT環境、ITへの投資規模、人員数など、現職の勤務先と同じ条件を持つ企業を社外で見つけることは困難です。転職した企業がどのような事業フェーズかによって、情シスとして解決しなければならない課題が異なることも珍しくありません。

 したがって、これまでに培ってきた技術力を生かすことを視野に入れていた場合、以下のような課題に直面する場合があります。

  • 次の企業が求めているIT環境と、自身が目指す方向にずれがある。
  • 現職では泥臭い運用改善が中心だったが、次の企業では高度なセキュリティ設計が求められる。

ケース2.マネジメントスキルが“属人化”している

 もう1つが、マネジメントスキルです。人をマネジメントすること自体が難しいのは言うまでもありませんが、情シスの場合、さらに難易度が上がります。では何が難しいのでしょうか。

 採用から情シス組織を作ってきた場合、自身のカラーに合ったメンバーを自身で採用することにもなるので、その環境ではマネジメントが機能しやすいでしょう。

 一方、既に在籍しているメンバーをマネジメントする場合は話が変わります。

  • 技術力で信頼を得られるか。
  • その企業の文化や事業理解を後追いでキャッチアップできるか。
  • 「後から来た管理職」としてどう振る舞うか。

 これらを同時に求められます。情シスは少人数体制になりやすく、マネジメント経験を積む機会そのものが限られる傾向にあります。結果として、マネジメントスキルの再現性が低くなりやすい構造があります。

 既に事業に対する深い理解を持ち、社内の人間関係を構築しているメンバーをマネジメントしていくのは相当な力量が必要となります。気が付いたらメンバーが転職活動を終えていなくなっていた、マネジメント力を発揮できずに早期退職せざるを得なくなったという事例を数多く見てきました。

 そのような事態を避けるため、採用企業では、情シスのマネージャーポジションについては選考回数を多くする傾向があります。人としてお互いが尊重できるかどうかを見極めることが非常に大切になってきます。

ケース3.新しい環境に馴染めない

 比較的規模の大きい企業から小さい企業に転職するといった場合、文化がガラリと変わる可能性があります。スキル面ではマッチしていても、以下の理由から新しい企業に馴染めないということも起こり得ます。

  • テレワークや出社の頻度が異なるため、想定していたコミュニケーション量を確保できない。
  • 評価のスタイルが合わない。
    • 情シス部門に特化した評価基準がなく、他部門と同じ評価基準である場合もあります。
  • 面接時に聞いていたスキルと、実際に求められるスキルが異なる。

そもそも「情シスマネジャー」の求人は多くない

 もう1つ見逃せないのが、転職市場側の事情です。そもそも情シスのマネジャーというポジションが、市場にあまり出てこない実態があります。大々的に募集が出る場合、

  • これまで十分なIT投資がされてこなかったのではないか。
  • セキュリティや統制に課題があるのではないか。

といった背景が想起されることもあり、企業側も慎重になります。

 しかし、情シス組織の成熟は情シスマネジャーポジションの鍵です。情シス組織の成熟やマネジャーの存在は、事業の成長に密接に関連しています。それが、転職しようと思ったときに思ったより求人が少ないと感じてしまう要因にもなっています。

 それでは、情シスとしてどの企業でも活躍できるようにするためにお薦めの取り組みを最後にご紹介します。

  • 日頃から自身のマネジメントスキルの棚卸しを進める。
  • それが別組織でも通用するものなのかを理解する。
  • 所属企業の経営動向で転職を考えるのではなく、市場動向や自分のスキルを把握しておく。
  • 情シスとして技術的なトレンドへのアンテナを貼っておく。

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