ランニングコスト85%減 三菱UFJ信託が見極めた“脱スクラッチ”の勝算:金融システムにSnowflakeを採用した決定打
三菱UFJ信託銀行グループは、従来の「パブリッククラウドでのスクラッチ開発」をやめる決断を下した。初期構築期間を約50%削減、ランニングコストを約85%削減という試算を弾き出した選定プロセスと評価基準とは。
金融機関のデータシステム構築において、「セキュリティや独自要件の充足」と「費用やスピード」の両立は常に困難な課題だ。パブリッククラウドにスクラッチでシステムを構築することは標準的な選択肢だが、データ量の増大と活用の高度化に伴い、開発費用と保守運用の負荷が経営を圧迫する要因になっている。
こうした中、三菱UFJ信託銀行および日本マスタートラスト信託銀行は、資産運用業務の高度化を可能にする「データマネジメントサービス」(DMS)のインフラ選定において、システム構築の「自前主義」を捨てる決断を下した。
両社が新たなデータインフラとして採用したのは、Snowflake社が提供する同名クラウド型データウェアハウス(DWH)だ。特筆すべきポイントは、パブリッククラウドにスクラッチ開発する場合と比較して「初期構築期間を約50%」「ランニング費用を約85%」削減できるという社内試算だ。
要件が求められる金融システムにおいて、当たり前と見なされてきたスクラッチ開発を捨てるのは、システム体制を根底から覆す決断だ。なぜ両社はこのような思い切った選択ができたのか。単なるツール導入にとどまらないインフラ選定のプロセスには、企業が直面する「データシステムのサイロ化、高コスト化」を打破するヒントが隠されている。
スクラッチ開発比で「費用85%減」を導き出した選定基準
三菱UFJ信託銀行および日本マスタートラスト信託銀行は、Snowflake社のクラウドDWHを採用した。2026年5月7日、Snowflake社が発表した。資産運用業務の高度化を支援するDMSのインフラとして活用し、2026年12月のサービス開始を目指す。
資産運用業界では、データ管理の複雑化に伴い、セキュアかつ効率的な管理基盤の整備が急務となっている。両社は、これまで培ってきた業務とITに関するノウハウを最大限に活用し、顧客のデータ管理に関する諸課題を解決するため、DMSの提供に向けた準備を機関投資家との間で進めている。
Snowflakeの採用に当たっては、国内外の金融・資産運用業界における広範なエコシステムを評価した。外部の金融/ESG(環境、社会、ガバナンス)データと自社の運用データを同一システムで即座に連携できるため、複雑なデータ移動の手間と費用を削減できる。パブリッククラウドにスクラッチで開発する場合と比較し、初期の構築期間を約50%、ランニングコストを約85%削減できると試算された点も決め手となった。
DMSの導入によって、データソースとの自動接続による収集業務の効率化や、セキュアなシステムでのデータ一元管理が可能になる(図)。Snowflakeで稼働する分析アプリケーションをワンストップで提供することで、迅速な意思決定を支援し、資産運用業務の付加価値を最大化させる。
今後は、AI(人工知能)技術の活用を含めたサービスのさらなる高度化を視野に入れ、機関投資家がデータから最大限の価値を引き出せる仕組みの実現に取り組む。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「三菱UFJ信託銀行、Snowflakeで資産運用を高度化 構築期間を50%削減」(2026年5月8日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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