Column
プログラム管理の5原則
「プログラム管理」は、プロジェクトが社内のほかの部署やほかの業務プロセスに与える影響を考慮に入れることによって、プロジェクト管理を新たなレベルに引き上げるものだ。本コラムでは、『リエンジニアリング革命』の共著者、ジェームズ・チャンピー氏が、CIOのためにプログラム管理の基本5原則を紹介する。
多くの企業において、プロジェクトの規模とその成功の可能性の間には負の相関関係がある。筆者は多くのERPプロジェクトの失敗を目にしてきた。
その原因は、プロジェクト管理の基本原則が守られていないことにある。しかし最近では、「プログラム管理」の原則とスキルの欠如が原因でプロジェクトが失敗するケースが増えている。
ITプロフェッショナルは少なくとも、プログラム管理に関してある程度の知識を持っている必要がある。プログラムマネジャーの役割を買って出るというのはリスクが大きいと思えるかもしれないが、何が問題になっているのか知らない方がリスクが大きい。ここでは、プログラム管理に関して覚えておくべき幾つかの原則を紹介する。
プロジェクト管理の原則を維持することは、ずっと以前からIT業務の一部となっている。測定可能なマイルストーン、必要なスタッフ、コスト、成果物などを示した計画がない状態で、またプロジェクトを管理するスキルを持ったスタッフがいない状態で開発プロジェクトがスタートすることはまれだ。今日、プロジェクト管理に役立つツールは多数存在する。しかし、相変わらず多くのITプロジェクトが所期の目標を達成していない。ビジネス面でのメリットが実現しなかったり、当初の予想よりも期間がかかったり、はるかに高いコストが掛かったりするケースが多いのだ。
残念ながら、多くの企業においては、プロジェクトの規模とその成功の可能性の間には負の相関関係がある。大失敗は大きなニュースにもなる。例えば、取締当局と情報機関との間での情報共有を目指した約2億ドルのFBIシステムのプロジェクトの失敗がそうだ。民間部門とて例外ではない。筆者は多くのERPプロジェクトの失敗を目にしてきた。その中には、総額8500万ドルの3年計画のプロジェクトが失敗に終わったケースもある。小規模なプロジェクトでもトラブルが発生したり、プロジェクトの規模が予想外に拡大したりすることがある。
その原因は、プロジェクト管理の基本原則が守られていないことにあると思われる。すなわち、計画の不備、スタッフ確保の遅れ、検査ミス、あるいは単なるずさんな仕事などである。しかし最近では、プログラム管理(プロジェクト管理ではない)の原則とスキルの欠如が原因でプロジェクトが失敗するケースが増えている。これは、今日のITプロジェクトのほとんどが、組織内の複数の部門に影響を及ぼし、その適用範囲がますます拡大しているからだ。その端的な例がERPプロジェクトであるが、財務プロジェクトや人材管理プロジェクトでも、社内の複数の部門、業務、プロセスに影響が及ぶのである。
「プロジェクト管理」は、その名称が示すように、一般的にシステム開発業務および関連するプロセス(スタッフの確保など)にフォーカスする。しかし複数の部門あるいは複数の業務に関係する複雑なシステムの場合には、従来のプロジェクト管理ではカバーしきれない。一方、「プログラム管理」が対象とする範囲は、システムだけにとどまらない。プロジェクトのビジネス目的、影響を受ける業務プロセス、必要な技術インフラ、システムが組織全体に与える影響なども対象とするのだ。IT部門がこれまで担当してきた業務よりもはるかに大きな仕事なのである。しかしITマネジャーが「プログラム管理は自分の仕事ではない」などと言っていたら、自身の地位が危うくなるだろう
プログラム管理に関してITマネジャーと業務マネジャーとの間で連携がとれているというのが、ベストなシナリオだ。しかしITマネジャーは、社内での業務の流れについて独自の視点を持っている。プログラムマネジャーの役割を買って出るというのはリスクが大きいと思えるかもしれないが、あなたのスキルの幅を広げることは確実だ。ITプロフェッショナルは少なくとも、プログラム管理に関してある程度の知識を持っている必要がある。何が問題になっているのか知らない方が、リスクが大きい。以下に、プログラム管理に関して覚えておくべき幾つかの原則を紹介する。
- プロジェクトのビジネスケースを明確化すること。「なぜプロジェクトを実施するのか」、そして「自社のパフォーマンスをどのように改善することを期待されているのか」を常に把握すること。何を期待されているのが明白でなければ、そのプロジェクト(あるいはプログラム)は既にトラブルを抱えていると言えよう。どのようなリソースを投入すべきかといった重要な決定を行う上での指針が存在しないからである。
- 経営陣を積極的に参加させること。システムが影響する部門が多ければ、それだけ多くの決定を行う必要がある。部署や業務が異なれば、システム要件に対する考え方も異なる。このため、避けることのできない議論をまとめ、標準化を推進する人間が必要なのである。そうでないと、そのプロジェクトの範囲、期間、費用が途方もなく拡大することになる。これを避けるには、上級経営幹部がプロジェクトに参加し、決断を下す必要があるのだ。
- 技術が変化するだけでなく、プロセスも変化することを認識すること。あらゆるシステムは、何らかのビジネスプロセスを実現する。システムの変更または修正の必要性を促すプロセスの変化に対して、ビジネス部門のスタッフが準備をしていることを確認しなければならない。変化に対応する準備が社内で整っていなければ、そのプロジェクトは会社のリソースを浪費する結果になりかねない。
- 最も優秀なスタッフで構成される専門チームを作ること。プログラム管理には、技術とビジネススキルを兼ね備えたスタッフが必要とされる。プログラム管理担当スタッフは、影響が及ぶ業務を深く理解していなければならない。ほとんどの大規模なシステムプロジェクトは、その企業の将来に大きな影響を与える。たまたま手が空いているスタッフをかき集めた、というのではだめだ。最も優秀な人材を集めること。
- プログラムは継続的な改善のプロセスであることを肝に銘じること。ほとんどあらゆる業界が、グローバル化とIT化の波を受けて大きな変革を経験しようとしている。これは、企業もそのパフォーマンスを絶えず改善することによって変化しなければならないことを意味する。完璧なプログラムは決して存在しないが、プログラムで導入するシステムは優れた品質と信頼性を兼ね備えたものでなければならない。プログラムマネジャーの仕事には終わりがない。それは生涯にわたる仕事になるかもしれない。
著者のジェームズ・チャンピー氏は、情報技術サービス大手、米ペロー・システムズのコンサルティング業務担当会長で、同社の戦略責任者も務める。同氏は、「Reengineering the Corporation」(邦題:リエンジニアリング革命―企業を根本から変える業務革新/日本経済新聞社)、「Reengineering Management」(邦題:限界なき企業革新―経営リエンジニアリングの衝撃/ダイヤモンド社)、「The Arc of Ambition」、「X-Engineering the Corporation」などのベストセラー書籍の著者でもある。
(この記事は2005年11月2日に掲載されたものを翻訳しました。)
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