Column
ROAを予算に織り込むCIOたち
「今年のガートナーとフォーブス・コムによる調査では初めて、CEOがIT投資を評価するための主要なツールとしてROAを挙げた」とガートナーのアナリスト、ジョージ・ロペス氏は語る。これが意味するのは、CEOは生産性の向上という成果をIT投資から期待しているということだ……
2005年を振り返ると競争が激化し、情報があふれ、企業はM&Aを繰り返した。こうした状況の中で、IT部門がなすべきことは何だろうか。
調査会社ガートナーのアナリスト、ジョージ・ロペス氏は、もはやコスト削減だけでは不十分だとして、根本的な生産性向上プロジェクトを提案(および実施)することが必要だ主張する。また、CEOは経営陣が情報の洪水でもがき苦しんでいると感じており、IT部門は経営幹部にとって本当に必要な情報だけを選び出すツールに資金を再配分して、彼らの生産性を高めることが必要だと主張する。また、M&Aのトレンドは2006年も続き、多くの企業の事業計画に混乱をもたらすと見ている。そこでIT部門はモジュラー化に力を入れ、柔軟性を高めるインフラへの投資の必要性をアピールすることが必要だという。
またロペス氏は「今年のガートナーとフォーブス・コムによる調査では初めて、CEOがIT投資を評価するための主要なツールとしてROAを挙げた」と語る。これはCEOが生産性の向上という成果をIT投資から期待しているということを意味するという。
さらにロペス氏は、2006年に向けた3つの予想を語った……
以下の調査結果と提案は、2005年1月~9月にかけて行われた企業各社のCEOへのインタビューに基づくものであり、10月にフロリダ州オーランドで開催されたガートナーシンポジウム/ITエキスポにおいてガートナーのアナリスト、ジョージ・ロペス氏によって発表された。以下に同氏の意見の一部を紹介する。
強まる競争圧力
CEOたちは、競争(リソースをめぐる競争と価格競争)が、自社のビジネスの成長計画の妨げになっているとの懸念を強めている。また、基本的なコモディティのコストの上昇は、各社の利益率を圧迫している。しかし「より安く、より多く」という宣伝文句に慣れてしまった顧客にコストを転嫁するのは難しいかもしれない。「それに、コストをすぐに価格に転嫁するような企業は、顧客からそっぽを向かれる」とロペス氏は指摘する。企業が持続的な価格競争に対応するためには、絶えず価格を変更する必要があるだろう。このため、競合企業よりも頻繁に価格変更を実施できる能力が重要なアドバンテージになる可能性がある。
この状況に対して、ITはどんな貢献ができるのだろうか。もはやコスト削減だけでは不十分だ。根本的な生産性向上プロジェクトを提案(および実施)すること、そしてダイナミックな価格設定方式を検討することが求められているのだ。
幹部を悩ます情報過多
CEOたちは、経営陣が情報の洪水でもがき苦しんでいると感じている。経営幹部たちは、大量の電子メールをチェックしたり、重要な情報と誤った情報をより分けたりする作業に忙殺され、本来の仕事が手に付かない――まさに戦場のような状態なのである。これは重大な問題だ。というのも72%のCEOが、自社の成功のカギを握っているのは経営幹部だと考えているからだ。
この混乱を解消するためにITが果たすべき役割とは、経営幹部が本来の仕事をする上で本当に必要な情報だけを選び出すツールに資金を再配分することにより、彼らの生産性を高めることである。これは、どの業務が現在の業績に貢献しているかを把握するだけでなく、自社のビジネスを「今日とは違う新しい明日」に向けて準備することを意味する、とロペス氏は言う。
M&A、事業分割による混沌
多くのCEOは2005年、事業を拡大するために合併、買収、分割という手段を利用した。ガートナーでは、このトレンドは2006年も続き、多くの企業の事業計画に混乱をもたらすとみている。CEOは、低価格路線を唯一の戦略にすることで体力を消耗した競合企業を排除しようと考えている。「そうすれば、値下げ圧力が弱まり、価格の安定を期待でき、場合によっては値上げによって収益を拡大することも可能になるからだ」とロペス氏は述べている。強い企業のCEOたちは、自社を防衛するために、間接費の削減や非コア事業の売却(事業分割)という手段により、買収をもくろむ企業に対して自社の魅力を減少させようとするだろう。
IT部門は、モジュラー化に力を入れる必要がある。ITが企業の脆弱性を増大させるようなことがあってはならない。「生ける屍」と化してしまったような病める巨大プロジェクトは中止すること。あらゆる事業部門に目を向け、容易に分離できる体制が整っているか確認する。買収企業を迅速に吸収するためには、エンタープライズアーキテクチャをどのように改良すべきかを検討すること。また、新たな合併が必至となったときは、柔軟性を高めるインフラへの投資の必要性をアピールすること。これは、説得が難しいミドルウェアとメッセージングのバックボーン導入の必要性を主張する機会でもある。
ROA改善に向けてなすべきこと
IT分野の権威によると、当分の間、ROA(Return On Assets:総資産利益率)がIT投資を評価するための主要な指標になるという。「今年のガートナーとフォーブス・コムによる調査では初めて、CEOがIT投資を評価するための主要なツールとしてROAを挙げた」とロペス氏は語る。これが意味するのは、CEOは生産性の向上という成果をIT投資から期待しているということだ。生産性が向上すれば、従業員数は削減できる。すでにガートナーでは、IT分野の就業者数は年間10%減少すると予測している。
ROAの改善に向けてITには何ができるだろうか。CIOは従業員の削減につながるIT投資にフォーカスする必要がある。自動車産業の例で考えてみよう。ROAという指標は、製造プロセスに変革をもたらした。生産性が改善され、より良い製品をより低価格で提供することが可能になったのだ。ROAについてCFOと話し合うことも重要だ。ITチームは、新しい技術や手法が生産性に与える効果を分析する必要がある。IT投資は、戦略的なビジネス構想と密接にリンクしていなければならない。また今日では、ソフトウェアは固定資産として扱われるため、ハードウェアと同じ3~4年の期間で償却する必要がある。
2006年に向けた3つの予想
CEOは2006年、どんな問題に悩まされるのだろうか。まず、リスク管理とインフラの復元性が、来年もCEOの最大の関心事になるだろう。第2の問題は、アウトソーシングプロジェクトで中国に期待していた企業は、慎重にならざるを得ないだろう。知的財産権の問題および従業員のスキルの欠如のために、中国が市場から締め出されようとしているからだ。このため、IT部門はサプライチェーンに変化が起きる可能性に備える必要がある。第3の問題は、ITをめぐる状況は年ごとに変化するということだ、とロペス氏は指摘する。現在、ビジネスリーダーたちは2008年に向けた計画を策定している。中国でオリンピックが開催され、米国とロシアでは大統領選挙が行われる。京都議定書による二酸化炭素排出抑制の最初の期限も2008年に始まる。IT部門は2008年を見据えた革新的なプロジェクトを提案しなければならない。
(この記事は2005年11月2日に掲載されたものを翻訳しました。)
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