Case Study
中小企業のための賢いIT投資術
食品添加物メーカーのCPケルコは、PC更新時に一度の買い替えではなく、3カ年の購入計画を策定した。中小企業におけるIT投資のポイントを見ていく。
ハードウェアの買い換えは、中小企業にとってはコストの面で特に厄介な問題だ。過去3年で従業員数が急増したCPケルコでは、従業員用PCをリースすべきか購入すべきかを分析した後、購入の3カ年計画を策定した。この策定は、同社が将来のニーズと利用可能な資金を把握および予測する上で、決定的に重要だった。
中小企業では、ハードウェア、ソフトウェア、サービス、人員など、すべてのIT投資は、最大限のビジネス価値の付加を目指して実施しなければならない。そのための6つのポイントを見ていこう。
過去3年で従業員を数百人から1700人超に増やした食品添加物メーカーのCPケルコは、デスクトップPCとノートPCの更新が必要になった時、ハードウェアを一度に買い替えることはしなかった。その代わりに、同社は3カ年の購入計画を策定した。
「われわれのような規模の会社には大きな出費だが、買い替えは必須だった。もろもろの古いハードを抱えていたためだ」とCPケルコのIT担当副社長ジョイス・ヤング氏は語る。「そこでわれわれは、まずリースすべきか購入すべきかを分析した。それからデスクトップとノートPCを3年ですべて刷新する計画を立てた」
古いハードウェアを更新する必要性は、CPケルコに限らずすべての企業が直面する共通の問題だが、中小企業にとってはコストの面で特に厄介な問題だ。中小企業では、ハードウェア、ソフトウェア、サービス、人員など、すべてのIT投資は、最大限のビジネス価値の付加を目指して実施しなければならない。そのためのポイントを見ていこう。
3カ年計画を策定する
これは読んで字のごとくだが、中小企業の中には、計画を必ず立てているわけではない企業や、ビジネスやITの戦略を1年以上のスパンで策定していない企業があまりにも多い。ヤング氏は、3カ年計画の策定は、CPケルコが将来のニーズと利用可能な資金を把握および予測する上で、決定的に重要だったと話している。
コンサルティング会社アリニアンのビル・ジョンストン社長は、ビジネス目標とその支援に必要なITリソースを明確に認識していなければ、IT投資を評価することはできないと強調する。「企業はIT投資によってビジネス価値を実現しなければならない。ビジネスの重点と目標がはっきりしていなければ、それは不可能だ」(同氏)
また、IT投資は、インフラ投資と戦略/戦術的投資という2つのカテゴリーに分類するとよいだろう。インフラ投資には、基本的なデスクトップアプリケーション、電子メール、ネットワーク運用、そのほかの必需品的な要素へのIT支出が含まれる。戦略的投資は、サプライチェーン管理や電子商取引に関する目標など、競争力に貢献する戦略的なビジネス目標に向けて実施するものだ。
アリニアンは、投資カテゴリーをさらに細分化している。内訳は、基幹インフラ、コミュニケーションや連携の基盤要素を提供するインターネットソフトおよびエンタープライズソフト、知的資本管理(分析、ビジネスインテリジェンス、エンタープライズポータル)ソリューション、“情報戦争”技術(競争優位を目指して革新的な情報管理を実現するために開発する技術)だ。
どのようなカテゴリーを採用する場合でも、カテゴリーごとに支出の上限や目安を定めるために、IT予算を各カテゴリーにどのような割合で配分するかを決めるべきだ。「各カテゴリーの割合を決めることで、それぞれに掛けられる費用を明確にしておくのが得策だ」とコンサルティング会社ボールドビジョンのブルース・バーンズ社長は語る。同氏は、予算配分の割合を決定するにあたっては、自社の現在のIT支出の傾向や、同業他社の平均が参考になるだろうと指摘している。
単に技術を購入するのではなく、ビジネス課題を解決する
「例えば、今や企業にとって不可欠な電子メールシステムを整備する場合、わざわざ4万ドルも費やして自前のメールシステムのインフラを導入する必要は必ずしもない」と、中小企業を顧客とする自営ITコンサルタントのジョン・リガナティ氏は語る。「メールシステムの整備をビジネスの課題と考えれば、その1つの解決策は、必要な技術を買って自力で対応することではなく、メールの運用をアウトソーシングすることかもしれない」
ジョンストン氏も同意見だ。「わたしは企業に、技術に力を注ぐ前に、まず2つの問いを自問することを勧めている。『われわれが取り組んでいるビジネス目標とビジネス課題は何か』、そして『その目標を効果的に達成するには、われわれにはどのような情報が必要か』という問いだ。これらの問いに答えが出せれば、目標達成を最も低コストで支援する技術を探し始められる」
生産性への影響を評価する
「生産性を損なうソリューションを導入してしまうこともありうる」とリガナティ氏は語る。「企業が導入したソリューションが習得しにくいものだったり、仕事の能率を落とすものだった場合には、ユーザーは使わずに済ませる方法を見つけ出してしまうだろう」。同氏は、業務プロセスの手順をフローチャートにまとめれば、特定のアプリケーションを導入することで手順が減るか、あるいは増える可能性があるかを、より容易に判断できると提案している。
マイルストーンを設定する
ジョンストン氏は、すべてのプロジェクトをサブプロジェクトに分割し、特に簡単で有益なものから取り組むことを勧めている。そうすれば、成果を着実に積み上げることができるうえ、達成した成果を失うことなく、プロジェクトを途中で見直したり、中止することもはるかに容易になる。例えば、CRMシステムを導入する場合、最初のマイルストーンは、すべての顧客データを1つのデータベースに集約することだろう。「だが、もしうまくいかなかった場合には、いつでも予算配分を変えられるようにしておかなければならない」(同氏)
簡素化と合理化を進める
CPケルコでは最近、IT環境の簡素化と標準化に力を入れることで、保守とサポートのコスト削減を図っている。「ネットワークOSとデスクトップOSをそれぞれ1つずつに絞るつもりだ」とヤング氏は語る。
こうした合理化の方法は、エンタープライズアプリケーションやサーバハードウェアなど、大規模な投資の対象にも適用できるとリガナティ氏は語る。「管理しなければならない機器の数を絞り、複雑さを軽減することを考えるとよい。その方が、5年前に買ったハードを全部実際に活用しようとするより賢明だ。10台の小型マシンの代わりに1台の大型マシンを運用すれば、複雑さもコストも軽減される」
プロジェクトの事後評価を行う
バーンズ氏は、プロジェクトの事後評価の時間を作ることを企業に呼び掛けている。そうしている企業はあまりに少ないと同氏は語り、未来学者のソーントン・メイ氏がCIOハビタットプロジェクト(CIOを取り巻く現状に関する研究プロジェクト)で実施した調査を引き合いに出している。それによると、回答者のIT担当役員がプロジェクトに割いている時間のうち、プロジェクトの事後評価にかけている時間の割合はわずか2%にすぎないが、彼らが考える理想の割合は38%だった。事後の検証をもっと重視すれば、将来の失敗を未然に防ぐのに役立つ。「『今回のプロジェクトの教訓は何か』を考える時間を取るべきだ」とバーンズ氏は話している。
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